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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第4章     

 私室といっても、それぞれに寝室、書斎、バスルーム、リビングがある、贅沢過ぎる間取りで。

 ヴィヴィはだるい身体を引きずるように、バスルームに入ると、練習着を脱ぎ捨て、

 使用人が準備をしてくたバスタブの湯に浸かった。

 鼻下まで白濁した湯に浸かり、目蓋を閉じて今日の練習を振り返る。

 反省点が多すぎて、あれもこれも直さなくちゃと、頭の中がぐちゃぐちゃになるばかり。

「……………」

 しばらく悶々としていたヴィヴィだったが、やがて「ふぅ~」と大きく鼻から息を吐くと、

 髪と身体を洗ってバスルームを後にした。

 用意されていた薄水色で踝丈のナイトウェアに着替え、濡れた髪を乾かそうとドライヤーに手を伸ばす。

 しかしその手は、取っ手を握る前に空中で止まった。

(………そうだ、こんな時は――)

 ヴィヴィは何を思ったのか踵を返すと、リビングを通って左側にある、匠海の部屋への扉をノックする。

 しかしもう寝ているのか、兄から返事は無かった。

 白石のマントルピースの上に鎮座した時計を見ると、時間はもう翌日を指していて。

(ちぇ……。お兄ちゃんに相手して貰おうと、思ったのに……)

 すごすごとバスルームに戻って、胸下まである暗めの金色の髪を、丹念に乾かす。

「あ~あ、明日は日曜なのに……お兄ちゃんと映画でも、観に行きたいよ~」

 鏡に映ったヴィヴィが、口を尖らせて愚痴っていた。

 ドライヤーを片付けて歯を磨き始めたその時、ヴィヴィの頭の中に名案が思い付いた。

(そうだっ 久しぶりにお兄ちゃんと一緒に、寝ればいいんだ!)

 途端にどんよりしていた心の中に、ぱあと明るい光が差し込む。

 自分の考えにウキウキし始めたヴィヴィは、手早くうがいをし、

 再度 匠海の部屋との境界線へと向かった。

 抜き足差し足で、匠海のリビングルームに入ると、その奥の寝室へと向かう。

 ヴィヴィの部屋の白色を基調とした内装とは違い、匠海の部屋は茶や黒系の多い落ち着いたインテリアだ。

 しかしその寝室も最低限の光しかなく、既にその部屋の主は就寝していると物語っていた。

 キングサイズのベッドの真ん中、羽毛布団にくるまった匠海は、すうすうと寝息を立てていた。

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