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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第4章
ベッドサイドの控えめな灯りのランプが、匠海の顔を暗闇にぼんやりと浮かび上がらせる。
いつも大人っぽく整った顔が、目を閉じて寝ているだけで、やけに幼く見えるから不思議だ。
(お兄ちゃん、寝顔、可愛い~♡)
ヴィヴィの顔がにんまりと緩む。
ベッドヘッドの傍に跪いて、しばらくその顔を眺めていたが、さすがに疲れていた身体は眠気をもよおし。
音を立てないように夏用の薄い上掛けを捲って、兄のベッドに潜り込んだ。
匠海の隣に身体を横たえてそちらを向くと、兄がいつも使っているボディソープの香りが、ヴィヴィを包み込んだ。
それだけでも、兄を近くに感じられて幸せなヴィヴィだったが、どうせなら昔のようにくっ付いて眠りたい。
(もう7月だけど、冷房効いているし、大丈夫だよね?)
恐る恐る手を伸ばして兄の肩に触れると、さらりとした肌の感触があった。
不思議に思って少し上掛けを捲ってみると、兄は上半身裸で寝ていて、何も着ていなかった。
さすがに少し狼狽えたヴィヴィだったが、すぐに、
(ま、いっか~。素肌のほうが涼しいし、なにより――お兄ちゃんを近くに感じられて、嬉しいもん)
ヴィヴィは早速、ぎゅうと匠海の二の腕に縋り付く。
「ぅ……ん………?」
若干覚醒した匠海が、目蓋を重そうに微かに開く。
しかしその目蓋は、それ以上開けられることはなく。
また目を閉じた匠海は、ヴィヴィが縋り付いているのと反対の腕を伸し、妹をその胸に抱き寄せた。
薄暗い部屋の中でも分かる、日本人にしては色素の薄い肌にぎゅうと密着させられると、
ヴィヴィの頬にしっとりとした、その感触が伝わって。
暖かくて、呼吸に合わせて微かに上下する逞しい胸板。
あやす様に撫でられる、背中に添えられた大きな掌。
ヴィヴィは長い睫毛に縁どられた瞳を細めると、うっとりとその感触を味わう。
(うふふ。お兄ちゃん、大好きぃ♡)
妹のその気持ちが伝わったのか、匠海はもう一度ヴィヴィを抱き寄せ。
ヴィヴィは身体も心も軽くなったように感じ、そしていつしか穏やかな眠りに就いていた。