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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
2人のユニゾンやリフト、ジャンプ、スピンを表現するペアプログラムにおいて、それが成っていなかったから、ジュリアンもあんなに厳しく注意していたのだ。
互いの身体が触れ合うことに躊躇していたら、アクロバティックな技の多いペアでは、そのうち大事故に繋がるかも知れないのに。
(そっか……。なるほど……)
ヴィヴィは両膝を揃えて舞の方へと向き直ると、薄い唇を開く。
「舞ちゃん……。ヴィヴィはすっごい鈍感だし、『お子ちゃま』って言われるし、そんなヴィヴィに言われても、全然説得力ないと思うんだけど……」
「………………?」
ヴィヴィのその長ったらしい前置きに、舞が不思議そうに顔を見つめてくる。
「んっと……。達樹くんは、舞ちゃんのこと、すっごく大事に思ってるよ?」
「え……?」
「あのね。ヴィヴィとクリスは、舞ちゃん達といっつも同じ時間帯に練習してるでしょ?」
「う、うん……」
ヴィヴィのたどたどしい説明にも、舞は辛抱強く付き合ってくれていた。
だからヴィヴィはしっかりとその黒目がちな瞳を見つめ、言葉を続ける。
「だから、見てると分かる。達樹くん。いっつも舞ちゃんのこと、じ~~って見てるもん」
「……っ う、うそっ」
何故か焦った様にそう否定する舞に、ヴィヴィは首を振る。
「嘘じゃないよ。だって、考えてもみて? 舞ちゃんの気持ちにも気付かなかった鈍感なヴィヴィが気付いたほど、達樹くん、四六時中、舞ちゃんの事ばっかり見てるんだよ?」
「……~~っ」
ヴィヴィのその情けない説明に、舞は妙に納得してくれた様で、林檎のように真っ赤になった。
「それにね、ヴィヴィと舞ちゃんが休憩中に話してて笑ったりすると、近くにいる達樹くんも、ふって笑ってるの。ヴィヴィ、何度かそういう事があって、何だろ? って思ってたんだけど……。そっか~。達樹くんも、舞ちゃんが好きだったんだね~?」
そう言ってにっこり笑ったヴィヴィに、何故か舞は焦った様子で突っ込んでくる。
「なっ!? そ、それは、もしかしたら、私じゃなくて、ヴィヴィの事が好きなんじゃないっ?」