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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章            

「え? それは100%ないよ」

 けろっとした顔でそう断言するヴィヴィに、舞が「ど、どうして……?」とどもる。

「だって、ヴィヴィが達樹君の笑顔に気付く時って、舞ちゃんと一緒にいる時だけだもん」

「―――っ」

 息を呑んで固まった舞に、ヴィヴィは5歳も上の女性なのに「可愛いな~♡」と心の中で萌えた。

「だから、一度、ほ――、あ……、クリスからだ……」

 これから舞を説得しようとしたヴィヴィの邪魔をする様に、自分のスマホがピルピルと鳴り響いた。

「あ、ごめん……。双子は受験で、忙しい時なのに……」

 突然うろたえ始めた舞に、ヴィヴィは笑顔で首を振る。

「ううん。ちょっと待ってね……? クリス? ヴィヴィ、今、お話し中で――、……、……うん、分かった……」

 通話を切ったヴィヴィは、すくっとソファーを立つと、その薄い胸の中に舞を抱き込んだ。

「ヴィヴィね、舞ちゃんも達樹くんも、大好きっ! だから、リンクの中でも外でも、仲良くしてくれると嬉しいっ」

「……ヴィヴィ……?」

 自分の腕の中でくぐもった声で自分を呼ぶ舞に、ヴィヴィ心を籠めて言葉を贈る。

「舞ちゃん……聞いてみたら? 素直に、率直に疑問をぶつけてみたらどうかな? きっと偶然が重なっただけで、勘違いなだけだと思うよ?」 

「……で、出来ないよ……っ」

 苦しそうなその舞の返事にも、ヴィヴィは納得してしまう。

 そう、そんなに簡単に意中の相手に確認出来るなら、誰もこんなに長年、苦悩しないのだ。

 舞も。

 ヴィヴィも。

「そっか。ヴィヴィ、ちょっと行ってくる……。ここで待っててくれる?」

「う、うん……」

 抱擁を解いたヴィヴィは、にこりと舞に微笑みかけると、ミーティングルームから出た。

 そのすぐ近くにクリスと、そして“くだん”の成田達樹の姿を認め、ヴィヴィはてくてく近づいて行く。

「……舞、いるのか?」

 心配そうな達樹の表情から、彼も自分のパートナーの様子がいつもと違うことを、感じ取っていたらしい。

「うん……。泣いてたよ……?」

「……どうして……」

 ヴィヴィの言葉に困惑した達樹に、クリスが落ち着いた声音で囁く。

「とにかく、じっくり、話し合いなよ……?」

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