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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
「ううん……。ヴィヴィだけ、じゃないよ……」
「ん?」
「僕も……。恋愛下手、らしいから……」
確かにクリスの言う通り、双子の兄は彼女が出来ても全く続かない。
最近は浮いた話の1つも無いクリスだが、女性とのお付き合いが嫌になったのか、はたまた受験まで後4ヶ月しかないから彼女を作る気が無いだけなのか――それは、妹であるヴィヴィでも分からない。
「あ゛~~……。なんか、いくら双子だからって、そういうトコは似なくても、ねえ……?」
そう心底困った様にぶつぶつ零すヴィヴィに、向かいに座ったクリスも、
「ね……?」
と、肩を竦めて呟いた。
一瞬の沈黙の後、互いに顔を見合わせて苦笑した双子は、食事を終えて立ち上がった。
「さて、恋愛不適合者は、また勉強に精を出しますか~」
う~んと両手を挙げて伸びをするヴィヴィに、少し眠そうなクリスも続いた。
「そう、しましょう……」
7時間のリンクでのレッスン、7時間の勉強を終えた双子は、クタクタになってクリスのベッドに寝転がっていた。
「ふわわ……。もう、センターまで、4ヶ月切ってるなんて、信じらんない……」
薄い羽毛布団から大きな瞳だけ出したヴィヴィが、その中であくびをしながら呟く。
「だね……。なのに、試合、4つも、ある、し……」
あくびを噛み殺しながらそう呟くクリスの瞳は、もうしょぼしょぼしていた。
「ふふ……。おやすみ、クリス……」
そう囁いて目蓋を瞑ったヴィヴィに、
「おや、す……み……」
クリスは安心した様にそう呟いて、眠りに落ちた。
す~す~と静かなクリスの寝息が聞こえてきて、ヴィヴィはほっと胸を撫で下ろす。
1人で自分の寝室で眠りたくない――その自分の我が儘で、クリスの睡眠まで阻害してしまったら申し訳無さ過ぎる。
昨夜、ヴィヴィの寝室の前で勝手に愛を囁いて、すぐに屋敷を出て行った匠海。
ヴィヴィはもう同じ思いを、繰り返したくなかった。
だから、逃げ出した。
さすがの匠海も、クリスの寝室にまでは来ないだろうし。
「………………」
ヴィヴィの眉間がきゅっと詰まる。
兄は、どう思っただろうか。
妹の寝室が、もぬけの空だと知って。
怒っただろうか。
呆れただろうか。
もう、ヴィヴィを、見限っただろうか――。