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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
10月4日(日)。
朝5時。
時間通りに目が覚めたヴィヴィは、クリスを起こそうとし――失敗した。
以前朝比奈に教えて貰った通り、脇腹をむんずと掴んだのに、何故か寝ぼけたクリスに捕まり。
そして抱き枕と化して、2分後。
「……何を、してらっしゃるのでしょうか、お嬢様は……?」
クリスを起こしに来た朝比奈に、呆れ顔でそう声を掛けられたヴィヴィは、かくかくしかじか、この状態に陥った理由を説明した。
「全く……。クリス様、朝ですよ。起きて下さい」
そう声を掛けながら、先程のヴィヴィと同じ様に脇腹をむんずと掴み上げた朝比奈に、クリスはびくりと身体を震わせ覚醒した。
「…………おは、よ」
相変わらず低血圧なその起き姿に、ヴィヴィは声にならない声で唸る。
「~~っ 何が違うのっ!? ヴィヴィ、さっき同じ事したもんっ!」
可愛らしい主の疑問に、朝比奈は「はて?」と首をひねる。
「そうですねえ……。敢えて言うなら “経験の差” ……でしょうかね?」
「えぇ~~……」
それは何百回経験を積めば、身に付く技能なのでしょうか……? とヴィヴィはどうでもいい事を思いながら嘆息する。
「おはよう、ヴィヴィ……、朝比奈、も……」
クリスはまだ半分しか開いていない目蓋のまま、妹の頬に起床のキスを落とし、ベッドの傍に立った執事を見上げる。
「おはよう、クリス」
「おはようございます」
3人は和やかに(?)朝の挨拶を済ますと、今日も分刻みのスケジュールを熟す為、それぞれの朝の準備を始めたのだった。
「ふにゃんっ♡」
リンクに着いたヴィヴィは、仲良くストレッチをしていた下城・成田ペアを見つけ、フィットネスルームのドアのガラス部分から覗きながら、変な声を上げて萌えた。
そんなヴィヴィの様子を後ろから見ていたらしいクリスは、何故かその細い背中を、自分の胸に抱き寄せた。
「朝っぱらから、人の幸せで、自分も幸せを感じられる……。そんなヴィヴィは、やっぱり可愛い……」
「か、可愛くはない、と思うけど……。でも達樹くんも舞ちゃんも、昔からヴィヴィ達と遊んでくれたし、可愛がってくれたじゃない?」
ヴィヴィは後ろのクリスを振り向きながら尋ねる。