この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
「うん。覚えてる……」
ゆっくりと抱擁を解いたクリスに、ヴィヴィは向き直って、自分そっくりの顔を見上げた。
「大事な人達が幸せになってくれるのは、嬉しいよ、ね?」
「そうだね……」
クリスが灰色の瞳を細めながら、そう呟いた時、
「お前ら、何で入って来ないの?」
中からドアを開けた達樹が、不思議そうにそう言いながら双子を見比べてきた。
「あ、達樹くん、おはよっ」
ヴィヴィがにやっと挨拶すると、フィットネスルームの中から、舞の明るい声が聞こえてくる。
「あ、ヴィヴィっ!! おはよ~っ」
「舞ちゃ~~んっ」
ダッシュで舞の傍へと飛んで行ったヴィヴィは、その細い身体に飛び付いて「良かったね~、頑張ったね~っ」と昨日の健闘を讃えた。
「昨日はホント、ありがとうっ クリスもっ 2人とも大好きっ!」
舞の満面の笑みと、零れ落ちそうなほど大きな瞳に微かに浮かんだ嬉し涙に、ヴィヴィの薄い胸がきゅんと疼く。
(いいなあ、達樹くん……。こんな素敵で綺麗な舞ちゃんが、恋人だなんてっ)
年頃の乙女としては、少々ときめきポイントが人とズレているが、そんな事にも気づかないヴィヴィは、にんまりする。
「えへへ。じゃあ、双子が2人の ♡愛のキューピットさん♡ でもいい?」
ヴィヴィのそのガキっぽい提案に、舞は苦笑しながら達樹を見上げる。
「ふふ、もちろん。……って、ちょっと、恥ずかしいけど……ね?」
「キューピットって……。お前ら、人の恋路より、自分達の恋路を心配しろよ?」
照れ隠しか、ややぶっきらぼうにそうぼそりと呟いた達樹に、ヴィヴィは灰色の瞳を剥いた。
「……~~っ “自分の恋路” が無いから、人の恋路を応援して、幸せのお裾分けを頂いているんじゃないかあぁっ」
そう悔しそうに喚いたヴィヴィの隣で、クリスもうんうんと頷いて同意する。
「まだ2人とも17歳なのに……。お見合い勧めてくる、親戚の伯母さんみたいなこと、言うなよ……」
呆れ果てた表情の達樹と、それを面白そうに見守っている舞は、やっぱり双子から見ても、とってもお似合いの恋人同士だった。