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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
隣に座ったヴィヴィは、その本のタイトルを見て首をひねった。
『Competitive Strategy : Techniques for Analyzing Industries and Competitors
競争戦略 : 産業と競争者を分析するための技術』
(ま、また……、難しそうなものを……)
眠くならないのかな~、と思いながらその本を受け取り、ぱらぱら中身を飛ばし読みするヴィヴィに、クリスが尋ねてくる。
「今夜、どうするかと、思って……」
「え?」
「僕のベッドで、寝る……?」
クリスのその言葉に誘発され、ヴィヴィの小さな頭の中に、昨夜の思いが甦る。
『自分はクリスを、どれだけ利用したら気が済むのだろう――』
「あ……、ああ、そうだね……。今日は、1人で眠れる」
そう言ってにっこり微笑んだヴィヴィに、クリスが心配そうな瞳を向けてくる。
「本当に……?」
「うん。ありがとう、クリス。昨日、ヴィヴィぐっすり眠れたよ」
クリスは “ヴィヴィ専用の睡眠導入剤” と言っても過言では無い程、安寧と平穏を与えて眠りへと導いてくれる。
「なら、良かった……」
ほっとした様にソファーを立ち上がったクリスに、ヴィヴィも立ち上がる。
「もう、寝るの?」
「うん。今日は、疲れた……ふわわ」
口元に手をやりながら大きなあくびをしてみせたクリスに、
「そっか。おやすみ、クリス」
ヴィヴィは背伸びしてお休みのハグとキスを送る。
「おやすみ、ヴィヴィも早く、寝るんだよ……? 寝れなかったらまた、僕のところに、来てもいいし……」
「ん。ありがと」
クリスのハグとキスを受けながら、ヴィヴィは瞳を細めて心からの礼を言った。
就寝準備を終え、身体を温めるジンジャーティーを飲んだヴィヴィは、朝比奈に「おやすみ」を言って寝室へと下がった。
けれど、ナイトウェアを纏ったヴィヴィが、キングサイズのベッドに入ることはない。
今日は日曜の夜。
どうせ兄は、ヴィヴィに愛をうそぶいた後、また他の女のところに行くに決まっている。
だからと言って、もうクリスには甘えられない。
ヴィヴィは昨夜同様、寝室の扉を開け放したまま、部屋の照明を全て落として私室を出た。