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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
抜き足差し足忍び足、で誰にも会わずに辿り着いたのは、1階のライブラリー。
何故ここにしたかというと、1週間前、学校をサボったヴィヴィがここのソファーでうとうとしていたら、朝比奈をはじめとする使用人達に「お嬢様が雲隠れなされたっ!?」と騒がれたからだ。
と言っても、断じて皆に騒がれたい訳ではない。
その反対で、クリスに迷惑を掛けず、匠海にも合わずに済む場所を考え抜いた結果が “ここ” だったのだ。
カーテンがきっちりと閉められたライブラリーは、当たり前だが一面漆黒の世界。
怖がりのヴィヴィは、扉の近くで恐怖と闘いながら暗闇に目が慣れるまで待つと、恐るおそる広い室内を横切った。
1ヶ所の遮光カーテンを開け放つと、背の高い窓辺からは月明かりが降り注ぎ、室内は真っ暗闇ではなくなった。
ヴィヴィはほっとすると、テレビの前の大きなソファーに座り、沢山あるクッションをかき集め、持参してきた毛布にくるまった。
少し感じていた寒さも全く感じなくなり、ヴィヴィはぼうとその場に座り込んでいた。
「………………」
FPのリハを熟し、受験勉強もしてへとへとに疲れているのに、眠くない。
ぼうと窓の外へと向けられていた視線が、徐々に下がって毛布に包まれた自分の膝元へと落ちる。
匠海は今頃、ヴィヴィの寝室に来ているのだろうか。
そして、そこに ヴィヴィが居ない = クリスの寝室で寝ている と勘違いしてくれただろうか。
それとも、昨日のヴィヴィの仕業で、もう妹の寝室に来る行為すらしていないだろうか。
それを確認することすら、何故か恐怖を感じ、ヴィヴィは寝室にいられなかったのだ。
もちろん、クリスにこれ以上、迷惑を掛けられないというのもある。
「……なに、やってるんだろう……」
薄い唇から微かに漏れるのは、自分へと問いかける言葉。
自分は一体、どうしたいのだろう。
兄に寝室へ来て欲しくないのならば、執事経由で書面で伝えるなり、本人にメールするなりすればいいのに。
どうしてそうしないのだろう。
どうしてそうする気が起きないのだろう。
自分は一体、兄にどうして欲しいのだろう。