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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章            

 馬鹿呼ばわりされた上、双子の兄の気を引きたくてこんな事をしているのかと問い詰められ、ヴィヴィは咄嗟に否定する。

「ち、違う……っ ヴィヴィは、もう、クリスに迷惑、掛けたくないだけなのっ」

 そのヴィヴィの言い分に、クリスは大きな溜め息を一つ付き、改めて口を開く。

「全く……、もう、忘れたの?」

「……え……?」

(……忘れた……? って、何を――?)

 クリスの意図する事が何の事だが全く分からず、ヴィヴィは戸惑いの表情を浮かべたまま、そこに寝転がらされていた。

「僕は言った筈だよ。

 “今のヴィヴィ” を、妹として受け入れると言った時」

「……――っ」

 クリスのその指摘に、ヴィヴィの華奢な身体がびくりと大きく戦慄いた。

 今年の1月頭。

 熱発して体調を崩したクリスは、回復してからしばらくヴィヴィを無視し、「汚らわしい」と否定した。

 双子の兄が自分と匠海の不実な関係に気付いたと知ったヴィヴィは、今後の身の振り方をクリスの言う通りにしようと決意し、彼の前に立った。

 しかし、当のクリスから言い渡されたのは――、



『離さないよ、ヴィヴィ。
  
 君は死ぬまで、いや……、

 死んだ後もずっと、“僕の片割れ”で、
 
“僕の可愛い妹”でいるんだ』



 そして双子のそのやり取りには “続き” があった。

 妹自身にも上記を宣誓させたクリスは、ヴィヴィの耳に唇を押し付け “ある言葉” を妹に吹き込んだ。


 
『応援も妨害もしない。

 ただ覚えていて――?

 どんな結果になっても、僕はヴィヴィの傍にいる』



「そしてヴィヴィも、言ってくれたじゃないか。『どんなクリスでも、ヴィヴィは受け入れる』って」

 クリスのその追及に、ヴィヴィは当惑して瞳を震わせる。

「……言った、けど……っ」

(ヴィヴィはどんなクリスでも受け入れるけれど、

 クリスは本当に “ヴィヴィを受け入れ過ぎ” なんだよ……。

 クリスしか、努力してなくて、

 クリスしか、辛い思いをしていないじゃない……っ)

 ヴィヴィはそう説明しようとするのに、上から睨み下ろされる兄の視線が強すぎて、まるで蛇に睨まれた蛙の様に、舌が強張り、言葉が発せられない。

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