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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章            

「じゃあ、その言葉通り、責任をもって、僕をちゃんと受け入れろ――。

 僕はヴィヴィに振り回されても、利用されても、苦痛じゃない。

 むしろそれに “喜び” さえ感じるよ。

 馬鹿で可愛い妹は、双子の兄である僕が居ないと、

 やっぱり駄目なんだな ってね――」
 
 クリスのあまりにも自虐的な言い分に、ヴィヴィは堪らなくなって叫ぶ。

「そんなの……っ 受け入れられる訳、無いじゃないっ」

 普通の兄妹は、そんな関係じゃないでしょう?

 どちらかが一方的に、相手を振り回して、

 どちらかが一方的に、相手を利用して。

 そんな、どちらか一方だけに、苦労を強いるなんて対等じゃない。

 そんなものは、もはや “兄妹” なんかじゃない。

 ヴィヴィはクリスにそんなものを求めてはいない。

 そんな役割を強要したくない。

 だって、

 だってずっと今まで、2人は対等で互いを尊重し合える、良い関係を築いてきたではないか!

(なんで……、なんで、そんな寂しいこと、言うの……?)

 悲しそうに双子の兄を必死に見上げてくるヴィヴィに、クリスは「じゃあ――」と続ける。

「じゃあ、違う僕を、受け入れてみる?」

「……え……?」

 ヴィヴィは咄嗟には、クリスの言葉の意味が分からなかった。

 自分は大切な双子の兄のクリスの、その全てを受け入れたいと、本当に心の底から思っている。

 けれど――、

(違う、クリス……って……?)

 戸惑った様に下から様子を伺っているヴィヴィの両手首を、クリスは骨が軋みそうなほど、強く握り締めた。

 そして、ヴィヴィそっくりの薄い唇を、躊躇なく開いた。

「双子の兄でもない、 “ただの男となった僕” を、ヴィヴィは受け入れられるとでも言うの――?」

「………………」

 ヴィヴィの薄い唇が薄らと開いていた。

 まさにぽかんとした表情で、自分に覆い被さっているクリスを見つめながら。

 瞬きを忘れた瞳は、ただ自分そっくりの双子の兄の顔を映し出していた。

(なんで……、なんで、そんな、泣き出しそうな、顔……)

 まるで子供のむずがる表情にも、大人の悲しみに暮れる表情にも取れる、クリスのそれ。

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