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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第96章
「僕のこと……、クリスお兄ちゃん って、呼んでみて……?」
そう続けたクリスに、ヴィヴィはぽかんと口を開いて呆気に取られる。
「……え……、な、なんで……?」
ヴィヴィが驚くのも無理はない。
この17年間、クリスは一度もヴィヴィにそんな事を望んだ事は無かった。
自分の事を「お兄ちゃん」と呼べと懇願した事など――、
「いいから……」
何故かそう促してくるクリスに、ヴィヴィは紺色の枕に乗せた頭を小さく傾けながら唇を開く。
「…………クリス、おにい、ちゃん……?」
「なあに……?」
ヴィヴィが疑問形でそう発した呼び名に、クリスは甘ったるい声でそう尋ねてくる。
まさか「何?」と返されるとは思っていなかったヴィヴィは、少し焦る。
「えっ!? えっと…………、すき、だよ?」
「ふ……。やっぱり、僕の妹は、可愛いね……」
そう言って灰色の瞳を細めたクリスに、ヴィヴィは「う~~……」と小さく唸る。
「か、可愛くは、ない……っ」
「そうだね、可愛くはないね……」
ヴィヴィの謙遜に、頷いて同意したクリスに、
「……ん……?」
と、ヴィヴィが不思議そうに尋ねる。
「あの、ひじき睫毛に、ごてごてグロス……。似合わない、可愛くない……」
「あ……」
クリスの言うその化粧は、先週の火曜~金曜まで、ヴィヴィがBSTに登校する際にしていたものだ。
カレンをはじめとする女子達は、
『ひじきだけど、ちょっと時代がずれてるけど、可愛いよ』
と褒めてくれたが、どうやらクリスにはお気に召さなかったらしい。
「もう、辞めてくれるね……?」
「うん……。ヴィヴィも、もう面倒くさく、なってきてた」
そう素直に認めて頷いたヴィヴィは、心の中でも思う。
(校則違反の制服も、もうやめよう……。スカート短い理由も、ネクタイちゃんと結ばない理由も、ヴィヴィには無いし……)
それに、常に傍らにいるクリスがぴしっと美しく制服を着こなしているので、自分もそうありたいと思った。
「ふっ いい子いい子……。じゃ、準備しよう……?」
妹を褒めながら頭を撫でなでしたクリスに、ヴィヴィは頷く。
「うん…………、クリス……?」
「なに……?」