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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章
「こっちのほうが、らしくていいよ。なんか無理してる感じだったもん」
「そっか……。あ、心配かけちゃってた……?」
途端に申し訳なさそうな表情を浮かべたヴィヴィに、カレンは苦笑する。
「ちょっとね。でも、大丈夫だよ?」
「ん?」
微かに首を傾げたヴィヴィのその金色の頭を、カレンがぽすんと撫でる。
「私だけじゃなくて、みんなもそうだと思うけど……、ヴィヴィのこと、信用してるから。『ああ、今はやさぐれたい気分なだけで、本気じゃないんだろうな』って分かってたよ。だから担任も、何も言わなかったでしょ?」
「……~~っ カレン……っ」
親友の労りの言葉に胸がきゅっと疼いたヴィヴィは、その腕の中に文字通り飛び込んだ。
「おっとっ」
驚いたようにその華奢な身体を受け止めたカレンが、ヴィヴィの頭をよしよしと撫でる。
「ヴィヴィ、ほんと、周りに恵まれてる……っ」
本当にそう思う。
幼稚舎からずっと一緒のクラスメイト達は、ヴィヴィのことをからかいながらも、いつも暖かく迎えてくれる。
スケートに関しても、コーチ陣はもちろん、リンクメイトや、国内外のライバル達も、皆いい意味で仲良く、良い関係を築いてこれている。
それもこれも全て、我が儘なヴィヴィに、周りが気遣ってくれてこそなのだろう。
「それは、ヴィヴィが今まで、みんなとの時間を大事にしてきてくれたからだよ」
「え……? ヴィヴィが?」
カレンの指摘に、ヴィヴィは当惑の表情を浮かべる。
(こんなに鈍感なのに? 迷惑しかかけてない気が、するけど……)
情けない表情を浮かべたヴィヴィの顔を、カレンが両手でほっぺを摘まむ。
「ま、そういうのって、自分じゃ分かんないよね? でもみんなヴィヴィが大好きだし、大切なんだよ」
こちらを見下ろしながらにっこり笑ったカレンに、その優しさに泣きそうになり、ヴィヴィは誤魔化す様にぎゅうと抱き着いた。
「……~~っ ヴィヴィ、卒業したくない~~っ」
今は10月頭。
もう卒業まで半年もない。
小さな頃から幼馴染で、ずっと同じメンバーで育ってきたクラスメイトと、卒業後に離ればなれになるなんて、今のヴィヴィには想像もつかないほど寂しい事に思えた。