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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章
「……JKだし、ヴィヴィ……」
ぶすっとして静かにそう突っ込んだヴィヴィに、
「見た目、JCだけどね」
そう負けじと応戦してきた匠海。
「~~っ!? ……もう、寝るっ!」
頬杖を付いていた両手をべちっとデスクに着いたヴィヴィは、椅子を引いて立ち上がろうとしたが、
「ごめん、冗談」
何故かそう甘ったるい声で止められて、ヴィヴィは結局浮かしかけていた腰をぽすっと椅子に落とした。
(…………なんなんの……)
結局座ったはいいが、手持無沙汰で、ヴィヴィは目の前の砂時計を両の掌でくるんだ。
自分の体温で、ガラスの表面が白く曇る。
ヴィヴィもお風呂上りでホカホカしているから。
「…………お腹、空いた」
そう唐突に呟いたヴィヴィに、匠海が意外そうに聞いてくる。
「え? 夜ごはん、食べたんだろう?」
「……それ以上に、レッスン、キツかった……」
学校から帰宅したら勉強し、ディナーを摂ってリンクへと向かう。
試合直前になると通し練習が多くなり、体力的な消耗も大きかった。
(クリスも、お腹空いてなきゃいいけど……)
「なんか作ろうか?」
兄のその提案に、ヴィヴィは小さく首を振る。
「…………太る」
「アスリートも大変だな」
心配そうな兄の声を遮るように、ヴィヴィは続きを促した。
「…………で?」
「ん?」
「…………どんな夢、みたの……?」
そりゃあ、気になるじゃないか。
自分の夢をみた、なんて言われたら。
夢の中の自分は自分じゃないけれど、やっぱり変な事をしていたり言っていたりしていたら、嫌だ。
訂正しておきたい――それは自分じゃない、と。
「え? ああ……言えないな」
兄の意外な返事に、ヴィヴィは一瞬そちらを振り向きそうになったが、耐えた。
「……どう、して……?」
そんなに夢の中の自分は変だったのだろうかと、ヴィヴィは余計心配になったが、兄の答えは180度違っていた。
「ヴィクトリアの全てを、愛している夢だったから」
夢の内容を思い出してか、うっとりとそう囁いてくる匠海に、ヴィヴィはむすっとする。
「…………言ってるじゃない」
「言っちゃったね」
くすりと笑う兄の声を聞くヴィヴィの胸の内は、笑うどころじゃなかった。
(やっぱり、そうなんだ……)