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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章
10月9日(金)
BSTの講堂では、明日の学園祭当日を控え、高等部3年の一同が最終リハーサルをしていた。
約5分の通しを行い、構成・振付のマイクとヴィヴィは音響のタイミングの指示、照明への指示を、下級生の学園祭実行委員の子達に伝える。
そしてヴィヴィは、ソリストの1人――アレックスに人差し指をびしっと向けて口を開いた。
「アレックス! もっと “どや顔” してっ」
「ど、どや顔?」
いきなりそんな命令をしてくるヴィヴィに、言われたアレックスがきょとんとする。
「うんっ 『どうよ、俺様、カッコいいだろう?』 って!」
ヴィヴィはそう言いながら、手本をみせる。
細い顎をくいっと掬い上げる様に下から上へと動かすと、長い金髪がふさあとたなびく。
そしてにやっと嗤って両腰に手を添えたヴィヴィは、胸を思いっきり反らせて得意げにポーズを決める。
「ってな感じで、やってみて~?」
両手を広げて「ほれほれ」とアレックスもやるようにと促すヴィヴィに、彼は心底嫌そうな顔をした。
「アレックスの素敵な金色の巻き髪が、ふわっと宙に舞ったら、女子の観客達、きっときゃあきゃあ騒ぐよ?」
ヴィヴィが楽しそうにそう提案しても、アレックスは恥ずかしそうにやりたがらない。
「え゛~~……っ 別に騒がれなくていい、俺」
その声を無視したヴィヴィは、くるりとアレックスに背を向けて、クラスメイトにも指示する。
「みんなもね~。最後の最後、一列になって前進する時、自信満々に誇らしげに胸張って顔上げて? 全然受ける印象違うから~」
「「「OK~っ」」」
「クリスとカレンのソロの入り、もう一回やってみてくれる~?」
ヴィヴィはソリスト2人にそう指示しながら、自分は講堂の舞台からぴょんと飛び降りる。
マイクと一緒に、ソリストの2人が舞台の隅と隅から出て来て中央で落ち合うまでのタイミングを、何回か繰り返して貰う。
「うん、これぐらいのタイミングがいいな。多目的ルームと講堂じゃ、やっぱり広さが違うからな~」
マイクの指示に、クリスとカレンが「「了解」」とそれぞれ頷く。
そんな2人を、舞台の上に両腕を乗せたヴィヴィが、ぼうと見上げていた。