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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章        

(クリス……。カレンは、どうなんだろう……?)

 クリスはヴィヴィが知るだけでも、3人の女子と付き合って速攻別れてしまった。

 ヴィヴィはその理由の1つが、彼女になった子が “知らない女の子” だったからでは? と思っている。

 クリスは無口で無愛想、感情の起伏に乏しい――とよく言われる。

 もちろんヴィヴィは生まれた時から一緒にいるので、そんな風には全く思っていないが。

 要するにクリスの一面しか知らずに好きになった女子では、双子の兄を理解するには随分と時間が掛かり、その間に別れが訪れてしまうのでは? ――と、ヴィヴィは思っていた。

 そしてヴィヴィは再度、舞台上の2人をじいと見つめる。

(カレンとはずっと幼馴染で、たぶん女子の中で、一番仲いいし……。長身の美男美女で、とってもお似合いなのに……?)

 お節介以外の何物でもないと自分でも分かっているのだが、大好きな2人がそうなってくれるととても嬉しいし、きっと当人同士もそうなんじゃないかとヴィヴィは思うのだ。

(クリスには、幸せになってほしい……。ヴィヴィの大切な人、だから……)

 そう思いながら2人を見上げていたヴィヴィの身体に、影が覆いかぶさる。

 舞台に観客席側からへばり付いていたヴィヴィの前にクリスが跪き、金色の前髪が垂れ下がったおでこに、柔らかい唇を押し付けてくる。

「ん? なあに?」

 ヴィヴィはきょとんとして双子の兄を見上げるが、クリスは両手で妹の頬をさすさすと撫でて口を開く。

「ん……。なんか、可愛い顔で、見つめてたから……」

「ん゛な゛……っ!? 」

 たったそれだけの理由で、公衆の面前でキスをするとは、とヴィヴィはおでこを押さえて真っ赤になったが、総勢20名のクラスメイトは「ああ、また双子がいちゃついてる」と呆れながら笑っているだけだった。

「……――っ」

(こ、これだ……っ このせいで、クリス、女子とのお付き合いが続かないんだっ)

 クリスが付き合ってきたのは全て、上級生か下級生。

 つまり彼の “人となり” を一番熟知している同級生と付き合っていない。

 何故なら、双子のクラスメイト達は、幼少の頃からクリスのシスコンぶりを、目の当たりにして育ってきたから。

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