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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章        

「なるほど。経験した事の無い事を挑戦する事で、自分の新たな自信にもなりますしね?」

 荒河の素晴らしいフォローに、ヴィヴィは微笑を浮かべて頷く。

「そう思って、前向きに取り組もうと思っています」

「NHK杯自体についてはどうですか?」

「はい。初戦が日本というのはとても嬉しいし、安心するし、やりがいもあります。今シーズンのSPもFPも気に入っているので、最初に日本のお客さんに観て頂けるのは、光栄です」

 にっこりと本当に嬉しそうに微笑んだヴィヴィに、荒河も笑う。

「そして、日本中の、いえ、世界中のファンが聞きたくて聞きたくてうずうずしているであろう、ジャンプの助走の改良についてですが――」

「あ~~、あはは」

 荒河のその大げさな煽りに、ヴィヴィは笑う。

「世界選手権が終わってから、ずっとジャンプの助走の改良に取り組んでいる情報は入ってきていました。どういう状況がお聞きしてもいいですか?」

「はい。え~と、具体的に言うとアクセルの助走を短くし、なおかつ、滞空時間を稼ぐという改良で……。本当なら昨シーズンに取り掛かる予定だったのですが」

「ああ、昨シーズンは、3回転アクセルが……」

 荒河がうんうん頷きながらそう悟るのを、ヴィヴィが引き継ぐ。

「そうなんです。降りられたり、降りられなかったりで、安定しなくて……。で、安定した今シーズンから改良に取り組みました」

「具体的には、どのように行ったんですか?」

 本当に興味津々といった感じで、切れ長の瞳を向けてくる荒河に、ヴィヴィは気を引き締める。

「はい。3月以降ずっと滞空時間、高さ、回転速度の記録を取り続けました。そして以前からの動画とも併せて、無駄な動作の排除、踏み切りのタイミング等を、もうほんと0.01秒単位、1mm単位で修正して行った……って感じです」

「それはまた、気の遠くなる作業ですね?」

 荒河のその言葉に、ヴィヴィはこれまでの過程を思い出しながら、深々と頷いた。

「ええ、本当に。でもおかげで自分の癖も知る事が出来たし……、うん、そういう意味でもとても有意義な時間でしたね」

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