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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章
「なるほど。ではより安定した、完成度の高い3回転アクセルを期待して良いと言う事でしょうか?」
「そう、ですね……。こんなに説明しておきながら、本番で転んじゃったら、すみませんが」
頑張って改良点を説明しておきながら、最後の最後でそう弱気な発言をしたヴィヴィに、また周りから笑いが起こった。
「ありがとうございました。新しいプログラムも、とても楽しみにしています。頑張って下さい」
「ありがとうございました」
そこでインタビューが終わり、ヴィヴィは「ふはぁ~」と大きな息を吐き出した。
「緊張した?」
にやっと笑った荒河のその問いに、ヴィヴィは脱力しながら答える。
「しました~~」
「どうよ、受験勉強は?」
「あはは……、まあ、ぼちぼちってとこです」
音声マイクを外して貰いながら、ヴィヴィはそう当たり障りのない返事を返した。
「で?」
と尋ねてくる荒河に、ヴィヴィは
「え?」
と訳が分からずに首をひねる。
「どこ、受験するの? もちろん日本の大学でしょう?」
「えっと……秘密……です。日本の大学ではあります」
そうもったいぶるヴィヴィに、荒河が不思議そうな表情を浮かべる。
「え? どうして?」
「う゛ぅ……。落ちたら、恥ずかしいから……です」
もにょもにょと誤魔化すようにそう言うヴィヴィが面白かったのか、荒河が笑う。
「あはは、じゃあ、受かったら教えて? っていうか、きっとすぐニュースになるか~」
「はは……、受かれば、ですけど……」
(クリスが「東大以外、受けないでいい」って言うから、ヴィヴィ、東大落ちたら浪人生だし……)
ヴィヴィの返事があまりに情けなさ過ぎたのか、荒河は力強い声で激励してくれた。
「まあ、受験も頑張って! 応援してる」
「ありがとうございますっ!」