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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章
そして双子からそれぞれ、HPの内容メールを受け取った牧野マネージャーは、ぼそりと零した。
「あいつら、ほんと……、特にクリス。互いの観察日記じゃ、ないんだから……」
そう、うんざりした様に言いながらも、牧野は苦笑する。
「ま、仲良きことは美しきかな……。あいつら喧嘩したら、ハブ vs マングース、犬 vs 猿 並みに、本気で怖そうだし……」
くっくっくっと笑う牧野の予想は、当たらずとも遠からず――なのだった。
その1時間後――。
「……お豆腐……?」
ヴィヴィは匠海の書斎で、そう不思議そうな声を上げていた。
「ああ、これなら胃もたれしないし、低カロリー、高たんぱく」
目の前の黒い皿に乗せられた丸い汲み上げ豆腐に、ヴィヴィはごくりと喉を鳴らす。
正直、もう胃がきゅるきゅる言い始めていたのだ。
今日は特に、NHKのインタビューの後、(いつもは勉強に充てている時間も)レッスンを受けていたから。
「ほら、食べてごらん? 国産大豆100%、天然地下水仕込み。美味しいぞ?」
その匠海の売り込み文句に「じゅるり……」と頭の中で舌なめずりしたヴィヴィは、もう我慢ならなくて手を出してしまった。
「…………美味しい」
そうぼそりと呟きながら恍惚の表情を浮かべる妹に、匠海は忍び笑いを漏らしていたが、ヴィヴィはというと、もう目の前の豆腐が美味しすぎて、それどころではなかった。
「お勧めは抹茶塩、ゆず塩もいいね」
ヴィヴィの手元に塩の入ったお皿を差し出してくる匠海の言葉に乗せられ、ヴィヴィは指でゆず塩を摘まむと、豆腐にかけて口に運ぶ。
(んん~~っ 大豆の味~っ 濃厚、美味しいっ ゆず塩も、滋味深くて良しっ)
目は口ほどにものを言う。
横顔ながらも妹の表情から大変満足していることを感じ取ったらしい匠海が、嬉しそうにこちらを見つめているのがヴィヴィにも分かった。
結局ぺろりと豆腐を平らげたヴィヴィは、両手を合わせてから、ぼそっと呟く。
「…………餌付け?」
「そうだよ」
楽しそうにそう即答した兄に、ヴィヴィは微かに眉を顰めた。
(く……っ やっぱりそうだったか……、しくじった……)