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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第97章        

「~~~っ!!」

 ヴィヴィは金色の頭をわしゃわしゃと文字通り掻き毟りながら、頭の中で言い訳する。

(違うもんっ ヴィヴィ、お兄ちゃんの事、もう愛してないもんっ そうだよ。自分の中に昔の “お兄ちゃんに恋していた自分” の記憶があるから、こんな風に反応しちゃっただけだもんっ うん、きっとそれで間違いない!)

 頭の中で自分に必死にそう言い聞かすと、ヴィヴィは洗面台の縁を両手で握り締め、鏡の中の自分に再度言い聞かす。

「ヴィヴィ、これは、条件反射行動だからねっ けっっっっっっして恋なんかじゃないからっ 絶対に勘違いするな!」

 そうこれは、長年掛けて培われてしまった、条件反射行動だ。

 匠海に触れられる → ヴィヴィは幸せを感じる。

 匠海に微笑まれる → ヴィヴィは嬉しく感じる。

 そういうシナプス伝達回路が頭の中で作られてしまっているのだから、そう1日2日で正常状態に治る訳が無いのだ。

 ヴィヴィは自分の一連の行動をそう結論付けると、納得したように頷く。

(そう、時間を掛ければ正常な自分に戻れる筈――きっとそうなる)

 目の前の作り付けの棚から歯ブラシと歯磨きペーストを取り出したヴィヴィは、無心で歯磨きをする。

 身体の汚れを洗い落とせるように、口の中を磨く事で気持ちまでリセット出来るように、自分の頭も心も、何度も何度も浄化作業を繰り返せば、きっと “まっさらな自分” に戻れる筈――。

 ヴィヴィはそう信じて疑わず、いつもより念入りに歯磨きをするのだった。





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