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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
10月10日(土)。
朝から夕方まで学園祭で盛り上がったBSTから、双子は興奮状態で帰宅した。
クリスの書斎でディナーまでの時間を勉強に充てていたが、ヴィヴィはというと先程からずっとぽやんとしていた。
「……ヴィヴィ、いい加減、勉強……」
「だって~っ ヴィヴィ、まだ興奮冷めやらないのっ あ~っ ほんと、この1ヶ月、楽しかったね?」
「うん、確かに……」
満面の笑みを浮かべて見つめてくるヴィヴィに、クリスも灰色の瞳を細めて懐かしそうに頷く。
バウロン(アイルランドのドラム)のBGMをバックに繰り広げられた、アレックスの見事なステップは、ヴィヴィの要望であった “どや顔” もはまり、一気に聴衆を惹きつけ。
そして総監督のクリスの名案のお陰で、厚みの増した全員でのステップ。
ラインダンスの脚の位置は、振付・構成のマイクとヴィヴィが行ったスパルタ特訓で美しいラインを描き。
男女ダンスリーダーのアレックスとカレン、彼らの素晴らしいリーダーシップで完成させた、全員での凝った足技の連続に、興奮した観客からは雄叫びが上がり。
そして全員をバックに繰り広げられた、クリスとカレンのソロでは、女子生徒達から黄色い歓声が上がるほど、爽やかで素敵で。
ケルト民族音楽の盛り上がりと共に、加速していくステップ。
そして20人全員が一列になって舞台際まで前進しての、堂々たるフィニッシュ。
5分弱のそのリバーダンスの舞台は、短いながらも観客は総立ちで、自分達も下級生達も、その保護者までも皆が興奮に包まれていた。
実はアンコールのコールが上がっていたのだが、何も準備していなかった3年生の一同は、焦りながらもカーテンコールに応え――もう大大大成功で幕を閉じたのだった。
終了してからもう2時間も経過しているのに、ヴィヴィは今にもそのルームシューズに包まれた足で、ステップを踏み出してしまいそうだった。
「なによりも、クリスのソロ! カッコよかった~っ ヴィヴィ、目の前で見れたからね~。くふふ」
背の順に1列に並んだところ、ちょうど真ん中らへんになったヴィヴィは、自分がステップを踏む前でクリスとカレンの踊りを見る事が出来て大満足だった。