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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
「そうかもね……。おやすみの挨拶、しよう……」
クリスのその言葉に、ヴィヴィも頷いて入ってきた車を迎えに行くと、車寄せに停められたのは、他でもない匠海の黒いBMWだった。
「あ、兄さんか……」
運転席から降りてきた匠海から、五十嵐が車を預かり車庫へと入れに行く。
軽い足取りで玄関ホールに続く3段の階段を上がってきた匠海は、そこにいた双子に気付き嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、2人とも。今帰りか?」
「うん。兄さん、おかえり……」
そう答えたクリスに、ヴィヴィも静かに続く。
「……おかえりなさい」
「ああ、ただいま。今日の学園祭は上手くいったか?」
「もちろんだよ……。凄くExciting、だった……」
クリスにしては少し興奮した様にそう言った声音に、匠海が優しい表情で頷く。
「ヴィヴィは?」
自分に向けられた匠海の興味深そうな瞳に、ヴィヴィは少し俯いて答えた。
「……クリスが、超、カッコよかった……」
「そうか。きっとそう言うヴィヴィも、可愛かったんだろうな?」
そう言ってクリスを振り向いた匠海に、
「とってもね……。朝比奈が動画、撮ってくれてるから……」
とクリスは伝える。
(あ……、お兄ちゃんに、学園祭のダンス、観られるんだ……。……って、べ、別に、いいんだけど……さ)
小さな頃から双子のフィギュアやバレエ、学校の発表物の映像を兄に観られてきていたのに、何故か今頃になってヴィヴィは少し恥ずかしく感じた。
「ああ、ダッドとマムと一緒に、観せて貰うよ。とても楽しみだ」
クリスと軽くハグしながら就寝の挨拶を交わした匠海は、ヴィヴィの方を振り向いた。
自分もこのまま兄とハグするのか!? と、その場でぴきんと固まったヴィヴィだったが、匠海からもたらされたのは意外な言葉だった。
「ヴィヴィ、少しだけ付き合ってくれる?」
「え……? あ、……うん」
軽く握った手の親指で外の方を指し示した兄に、ヴィヴィは動揺しながらも頷く。
「……じゃあ、ヴィヴィ、おやすみ……」
隣のクリスがそう囁いて、ヴィヴィを軽くハグしてくる。
クリスと就寝の挨拶とキスを交わしたヴィヴィは、朝比奈に荷物を預け、匠海に促されるまま庭へと出た。