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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
(……もしかして……、ヴィヴィが思っている以上に、お兄ちゃんはヴィヴィの事、大事に思ってくれてるのかな……?)
そう兄の気持ちを類推したヴィヴィだったが、すぐに我に返り、頭を振ってその考えを打ち消す。
唇の前にかざされていた両手の指が、きゅっと握りしめられる。
怖い。
恐い……。
何にか解らないが底知れぬ恐怖を感じ、ヴィヴィは自分の身体を自分で抱き締める。
(もう、来ないで……。
お願いだから、もう、ヴィヴィの中に、入って来ないで……。
恐いの……っ)
そう脅え切ったヴィヴィは、自分の貧相な身体が震えている事に気づき、まるでもっとその身を温めようかとする様に、ずるずると暖かい湯の中に頭の先まで浸っていくのであった。
10月11日(日)。
いつも通り5時起きでリンクへ向かった双子は、8:30からスタートする予備校の模擬試験を受ける為、最寄りの予備校の校舎へと車で向かっていた。
全国統一高校生テスト。
この模試はセンター試験の「本番レベル」で作られた「絶対評価」のテストで、なおかつ全国の高校生が無料で受けられる模試ともあって、受験者数は半端ない人数だったりする。
「♪ 全国と~いつ、小~学生テストっ ♪」
ヴィヴィはベンツのシートに背を預けながら、有名な予備校のCMメロディーを口ずさむ。
「……高校生、テスト……」
そう隣から訂正を入れたクリスは、ふわわと眠そうにあくびをしていた。
そしてその12時間後。
「ぜ、ぜんこく、と~いつ……、しょうがくせい、てすと…… orz」
朝から晩まで分刻みで模試を受けた双子は、ベンツの中でぐったりしていた。
ヴィヴィの調子外れの歌にも、クリスはもう突っ込んですら来ない。
そのままリンクへ直行した双子は、朝比奈が用意してくれたディナーを食し、休む間もなくレッスンを受ける。