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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
そして日付が変わる頃に帰宅したヴィヴィは、就寝準備を整えた頃には5秒で眠れるほど睡魔に襲われていた。
「今日は、止めておこうか」
妹の様子を見てそう言葉を掛けてきた匠海に、ヴィヴィはゆるゆると金色の頭を振る。
「……有言、実行……」
そう唸りながら兄の書斎で10分過ごしたヴィヴィだったが、その半分以上はうつらうつらしており、会話の記憶もほぼゼロに等しかったのだった。
10月15日(木)。
NHK杯を明日に控えたこの日。
朝練を経て午前中はBSTに登校し、皆と自主勉強に励んだ双子は、クラスメイトの激励を受け、早退した。
リンクへ直行し、午後一杯を滑り込みと最終チェックに費やすと、カフェテリアで朝比奈が用意してくれたディナーを摂った。
東京駅20:10の新幹線の乗り込み、名古屋駅に着いたのは21:51。
駅から徒歩1分の大会オフィシャルホテルにチェックインした双子は、双子チームのスタッフ達と軽くミーティングを持った後、早々に休む事となった。
ヴィヴィは長めに湯に浸かり、念入りにストレッチをすると、明日の準備を終えてベッドへと潜り込む。
これからの3日間、ルームメイトとなるのは、女子シングルの宮平知子。
7ヶ月ぶりの再会を喜んだ2人だったが、互いに早々に眠りに就いた。
10月16日(金)。
いつもの癖で5時に目覚めた双子は、申し合わせてホテルの近くをジョギングする事にした。
本当はホテルのジムに行きたかったのだが、如何せん時間が早すぎて開いておらず。
すっかり秋の気配色濃くなった涼しい早朝の名古屋の街を、爽やかな気分で走り終えたヴィヴィは、部屋へと戻ると足音を殺してバスルームへと入る。
宮平が起きる気配がないので、貯めた湯に浸かっていると、スマホにメールが届いていることに気付いた。
「……あ……」
ヴィヴィの咽喉から漏れた小さな声が、バスルームに響く。
メールの相手は、他ならぬ匠海。
受信時間は、昨夜の23時。
その時間は、お風呂に入ったり宮平と話したりしていたので、気付かなかったらしい。