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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章           

『もう寝ているかな?

 いよいよ、今シーズンの初戦だな。
 
 ヴィクトリアの新しいプログラム、とても楽しみにしてる。

 失敗してもいい。

 そこから何かを学び取れる、そんな充実した試合になることを祈ってる。』

 兄のその激励のメールに、ヴィヴィは速攻返信してやった。

 もう6:30。

 いつもの匠海なら起きている時間だ。

『失敗してもいい、とか言わないで』

 そんな可愛くない妹からのメールに、兄からも速攻で返信が返ってきた。

『あはは、ごめん。

 悪気は無かったんだよ、許してくれ。

 ヴィクトリアの良い笑顔が見られる事、期待してるよ。

 あと、長湯して風邪ひくなよ?』

 兄のそのメールの内容に、ヴィヴィは驚いてバスタブでずり落ち、溺れそうになった。

(な、なんで、ヴィヴィが今お風呂入ってること、分かったの……?)

 いつもこの時間に、お風呂に入っている訳でもないのに。

 そして兄の言う通り、追い炊き機能のないホテルの浴槽の湯は、少し冷めてきていた。

 ヴィヴィは兄の予知能力(?)に若干の薄ら寒さを覚えつつ、それを見事に表現した返信を送り付けてやった。

『 変態 』

 ヴィヴィは送信ボタンを押した直後は、「ふふん」と鼻で笑うくらいご満悦だったが、風呂から上がり身体を拭き始めてすぐ、自分の失態に気付いた。

(……っ お兄ちゃん、絶対今頃メール見て、お腹抱えて笑ってるんだろうな。……無視しとけば、よかった……)

 自分の乗りの良さというか、サービス精神旺盛過ぎる気質がこんなところで露呈してしまい、ヴィヴィは人知れず頭を抱えたのだった。





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