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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
ヴィヴィはリンクの隅で、立て続けに3回転ルッツ + 3回転トウループを降りる。
「決まりました、3回転+3回転! ここからは場内も、安心して手拍子を送っていける」
レイバックスピン、チェンジフットコンビネーションスピンと4つ目までの要素を着々と熟していくヴィヴィに、その度に歓声が上がる。
「後半にもう1つジャンプを残しています」
『ステップからのトリプルフリップ。流れ高さ、共にいいですね』
「さあみんなで、このストレートラインを見ていきましょう。この曲同様、彼女ならではの、輝く様な世界が展開していきます」
満面の笑顔で嬉しそうに跳ねながら駆け出すヴィヴィに、会場から大きな手拍子が湧き上がる。
『この細かい音の中で、全身をうまくコントロールして……深いエッジワークと、う~ん、いいステップですね……。っと、最後にフリーレッグを下さずにスパイラル! ふふ、攻めますね~』
八木沼が舌を巻く中、フライングチェンジフットスピンを回りきったヴィヴィが、堂々とフィニッシュする。
「喜び全開でのフィニッシュ! ああ、本当に嬉しそうに……、っと……、おや、篠宮選手、どうしましたでしょうか?」
刈谷アナが心配そうな声を上げる視線の先、先程まで嬉しそうに小さくガッツポーズをしていたヴィヴィが、子供の様に溢れる涙を拭っていた。
『ああ、泣いちゃいましたね……。う~ん。それだけ連覇や、今シーズン初めての試合、しかも久しぶりに観客の前で滑るという、プレッシャーが強かった……。ホッとしたんでしょうね』
八木沼のそのフォローも、しみじみと感慨深いものだった。
「そんな彼女を称える様に、名古屋のリンクは一杯の笑顔に包まれて、総立ちとなりました」
四方に丁寧に礼を送るヴィヴィに、「待ってたよ~っ」「お帰りなさい!」と暖かな観客の声が掛けられ、それにまたヴィヴィが涙ぐむ映像が、大きな液晶画面に映し出されていた。
「八木沼さん、このSPは持ち味であるスピード感というのが、全体的に生きていましたね?」
『そうですね。長い手足を生かす、そういった動きというのが際立っていましたので、そういう部分では演技構成点を伸ばしてくるのかな、という感じがしましたね』