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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
『では、明日はフリーですが、見どころはどこですか?』
「え~……、今シーズン更に難易度を上げていますし、みんな同じだと思いますけれど、今自分が出来る最高のものをやっていますので……。明日も攻める気持ちと、自分への挑戦という気持ちを持って、強い気持ちで頑張ります」
『お疲れ様でした』
「ありがとうございました」
にっこりと微笑んだヴィヴィは、カメラの前から消え、傍で待っていてくれたクリスに、
「のど乾いた~……」
と、ミネラルウォーターのペットボトルをせがんだのだった。
翌日、10月17日(土)に行われた女子FPでも、3回転アクセルを単独でもコンビネーションでも決めたヴィヴィは首位に立ち、堂々の金メダルに輝いた。
クリスはSPで2Cellosの『影武者』を演じ切り、SP1位へ。
3日目、10月18日(日)に行われた男子FPでも1位を守りきり、全体を通しての金メダルとなった。
結局終わってみればNHK杯3連覇となった双子は、14:50からのエキシビションでもそれぞれ初披露となるエキシビションナンバーで、会場を盛り上げた。
そして名古屋駅直結のオフィシャルホテル・名古屋マリオットアソシアホテルでは、19:00からクロージングバンケットが開かれる予定となっていた。
持参したワンピースに袖を通したヴィヴィは、自分の荷物を全て纏めてから同室の宮平と連れ立って、バンケット会場へと現れた。
既に関係者で溢れかえっていたボールルームの前で、クロークに荷物を預けるヴィヴィを、宮平がしげしげと眺めていた。
今回のNHK杯で2位となった宮平は、何故が眉根を寄せて情けない表情を浮かべる。
「ヴィヴィの隣り、並ぶの、いや~っ」
何故かそんな事を言ってくる宮平に、ヴィヴィは頑張ってフルメイクをした小さな顔をしょげさせる。
「え~、どうしてぇ~、知子ちゃん?」
「スタイル良過ぎっ! モデルかってのっ」
宮平のその突っ込みに、ヴィヴィは軽く首を捻る。
(モデル……? ああ、ヴィヴィ、“ガリガリ子ちゃん”、だから……)
特に今日は、今迄バンケットでは着たことのないミニのワンピースを纏っていたので、その足の細長さ具合が浮き彫りになるのだろう。