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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章           

 出迎えてくれた父に、熱い抱擁と称賛の言葉を貰い。

 そして約2時間の新幹線移動中も勉強していた双子はもうへとへとで、就寝挨拶を交わすとそれぞれの私室へと下がった。
 
 早々に入ったお風呂でウトウトしてしまったヴィヴィは、朝比奈の声掛けで起きた。

「ふわわ……」

 両手で口元を押さえながら、バスルームから出て来たヴィヴィを待っていたのは、4日ぶりに顔を合わした匠海だった。

「やあ、おかえり、ヴィクトリア」

 白いソファーから立ち上がった兄が、自分に向かって数歩、歩み寄ってくる。

「…………っ ……た、だいま」

 あまりにも突然の事に、ルームウェアに包まれたヴィヴィの薄い胸が、どくりと大きく跳ねた。

 何とか帰宅の挨拶をしたヴィヴィに、匠海の端正な顔が綻ぶ。

「NHK杯、お疲れ様。とても素敵だったよ、ショートも、フリーも」

 兄のその言葉に、ヴィヴィはおずおずと言葉を続ける。

「……っ み、観たの……?」

「当り前だろう? ずっと楽しみにしてたんだぞ、今シーズンのお前の滑り」

 そう言って笑った兄に、ヴィヴィは心の奥底で「本当かな……?」と首を捻った。

 そして、視線を兄の私室の方へと向け、ぼそりと呟いた。

「…………行く?」

 兄と約束した、毎日10分の面会。

 NHK杯の為に名古屋にいたヴィヴィは、当たり前だがその責務を果たせなかったので、当然今日はそうするつもりだった。

 しかし、兄の返事は違っていた。

「初戦で緊張しただろうし、疲れてるだろう。今日はいいよ。どうしてもヴィクトリアの顔だけ、見たくてな。じゃあ、おやすみ」

 そう暖かな声音で労いの言葉を囁かれたヴィヴィは、ちらりと匠海の顔を伺いながら、ぼそっと零した。

「…………おやすみ、なさい」

「ああ。早く寝ろよ?」

 笑みを深くして頷いた兄は、ヴィヴィの前から離れていく。

 匠海のその背中に、ヴィヴィは蚊の鳴きそうな掠れ声で呼び掛けた。

「…………おにい、ちゃん……」

「ん?」

 くるりと振り返った兄を真っ直ぐに見られなくて、ヴィヴィはふいと視線を外す。

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