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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
10月23日(金)。
中国杯2日目のこの日、朝の公式練習に各々参加した双子の調子は80%といったところだった。
17:00から、女子シングルのSP。
18:45から、男子シングルのSP。
タイトなスケジュールであったため、クリスはヴィヴィのリンクサイドには立てなかった。
ヴィヴィのSPは、6分間練習でもタイミングが合わなかった為、3回転アクセルを回避し2回転アクセルに。
それでも大きな失敗もなく、3回転+3回転のコンビネーションも決めた事より、SPを滑った10名中で首位に立った。
一方のクリスは、リンクサイドでヴィヴィが必死に祈る中、4回転トウループを軸が曲がりながら何とか着氷し、こちらも首位に立った。
10月24日(土)。
大会3日目。
朝の公式練習から、各国の報道陣はずっと双子に張り付いていた。
特に前日のSPで3回転アクセルを回避したヴィヴィは、「篠宮選手、トリプルアクセル、再度の不調か?」と騒がれているらしく、正直そういう報道には辟易していた。
(とにかく集中を切らさないようにしよう……。外野を視界に入れないように……)
ヴィヴィはそう決心すると、ホテルへのバス移動時もその他の時も、ずっとヘッドホンをして目蓋を閉じ、自分のペースを守る事だけに集中した。
16:15から始まる女子FP。
その最終グループ最終滑走のヴィヴィは、ホテルで軽く食事を取り、柿田トレーナーの下で心を整え、準備万端でホテルを出た。
試合会場で念入りにストレッチをし、身体を温めて本番用に整えたヴィヴィは、FPの衣装に袖を通す。
赤い生地全面に施された金糸の刺繍の胸当て。
赤地にゴールドの大きなラメが入ったスカートは、左右セパレートになっている。
その上に鮮やかな蒼色のサリーをタスキ掛けにしており、前後は金色の腰ベルトを模した飾りで止められている。
「前髪を上げた方がいい」と言い張るジュリアンの言葉に従い、露わになった額には赤いヒンディーが。
シンプルにお団子にした髪には、ゴールドと赤の髪飾りが着けられている。
(す~す~する……)
おでこに当たる冷たい風を感じ、ヴィヴィは少し落ち着かなかった。