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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章           

『見せておくれ 私の手管に堕とされて

 サムソンが明日 鎖でつながれる姿を! 』

 ヴィヴィが一番気に入っている歌詞を奏でるチェロの音に乗り、フライングキャメルスピン、フライングチェンジフットコンビネーションスピンを回りきれば、演技は後半へと入る。

 オーボエの中東風の音色は、バッカナール(酒宴)の始まり。

 リンク中央で止まったヴィヴィは、下から両手をゆっくりと持ち上げ頭の上で両手の甲をクロスして合わし、ジャッジに誘惑の流し目を送る。

 腰を左右にくねらせて滑り始め、顎の下に添えた両手の甲を優雅に下へ振り下ろしながら、胸を張り頭を後ろにそらす。

 スピードに乗った助走、そしてステップからの3回転ループ

 降りた後の流れの中、フリーレッグのエッジを掴み、空いたほうの腕は掌を上に向けながら前へと伸ばす。

(ジャッジの皆様、加点してくだされ……)

 そう冗談ぽく心の中で祈りながらも、身体は次のジャンプの助走へ。

 スピードに乗りながらカスタネットの音に合わせ、頭の上で左右の手首を打ち鳴らすと、飛んだのは3回転フリップ + 2回転トウループ。

 そして、単独での3回転サルコウ。
 
 打楽器の激しいソロの中、スカート部分を両手で後ろから前へ勢い良く振り払い、真ん中で割れた赤いスカートがひらりと宙に舞う。

 吠える金管楽器の勇猛な音色に乗せて踏む、ステップシークエンス。
 
 ここはデリラとサムソンが、交互に現れるところ。

 上体をくねらしながら妖しくステップを踏むデリラが現れたかと思うと、サムソンを模して力強く、がに股に開いた両太ももに両手を振り降ろし、横へと伸ばした右腕と掌を天へと向けた左腕を頭の上にかざす。

 両手首を頭の上で交差させながらツイズルを回るデリラのまま、フリーレッグと上体を斜めに傾け風車のように回るウィンドミルスピンで、ステップを締めくくる。

(ああ、きつい……っ)

 最後のジャンプ、3回転フリップ + 2回転ルッツ + 2回転ループを飛んだ頃には、ヴィヴィの身体には疲労が蓄積していた。

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