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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
足元に置かれた大きなモニターには、先ほどの演技がスローで再生されていた。
水分を取りながらジャンプの着氷を確認し、コーチに気になった点を尋ねていると、アナウンスがなされる。
中国語が聞き取れなくて、目の前のモニターで自分のスコアを確認し、ヴィヴィは顔を顰めた。
「あ~~……」
(当たり前だけど、NHK杯より、低い……)
現実逃避するようにタオルで汗を拭きながら顔を覆った娘に、ジュリアンはその背を抱いて明るく褒めてくれた。
「まあまあ。中4日でここまで纏められたんだから、合格合格!」
そしてSP1位で、FPの最終滑走者であったヴィヴィは、FPでも1位の総合優勝を果たした。
(順位じゃないんだよ~、順位じゃ~……。いや、うん、1位なのは、まあ、ほっとしたけど……)
そう心の中でボヤキながら、フラワーガールが持ってきてくれた花やプレゼントにお礼を言って受け取り、スケ連のスタッフに預ける。
再度水で口内を潤したヴィヴィは、ち~んと鼻を噛んで気を落ち着けると、テレビスタッフが待ち構えているブースへと足を運んだ。
「今、篠宮選手がこちらに到着しました。お疲れ様でした」
男性リポーターのその言葉に、ヴィヴィはぺこりと頭を下げる。
「フリーが終わって今の率直な感想をお聞かせください」
「ええと……。疲れました……」
そう端的に答えたヴィヴィに、リポーターが続ける。
「NHK杯から、4日しか空いていませんでしたしね? けれど転倒等の大きな失敗もなく、うまく纏めてきたなという印象を受けました」
その言葉に、ヴィヴィは小さく頷きながら、思考を巡らす。
「そうですね。アクセル……、2本目のアクセルを飛んだ途端、正直ヒヤッとしましたが……。何とかループを捻じ込めました。最後のスピンは、う~ん……って感じで」
軽く首を傾けてそう締めくくったヴィヴィ。
「今日の演技に点数を点けるとしたら、何点でしょうか?」
「う~~ん。60点、くらい……? バテちゃいましたし」
「ふふ」と苦笑するヴィヴィに、リポーターはそれでも満面の笑みを向けてきた。
「グランプリシリーズ2戦を終え、2戦とも堂々の金メダル。そしてグランプリファイナルに、一番乗りとなりました」
(あ、そう言えば、そうか……)