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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章           

 目先の事を悔やんでばかりいたヴィヴィだったが、そういえばこれでファイナルの出場資格を手にした事になる。

「あ、はい……。東京で開催されるファイナルに、どうしても出たかったので……、それは、うん。本当に、とても嬉しいです」

「ただそうなると、受験生だからお勉強との両立も大変ですけれどね?」

「あはは。まあ……、最初から試合があると想定して、勉強のスケジュールを組んで……じゃない、“クリスが組んでくれた” ので、多分大丈夫だと思います……。うん、たぶん……(´・ω・`)」

 最初は笑っていたのに、どんどん自信なさそうになっていくヴィヴィに、周りから笑いが起こった。

「あはは、頑張って下さい。日本国民全員が応援しています。2日間お疲れ様でした」

 リポーターのその励ましの言葉に、ヴィヴィはようやくほっとした表情を浮かべるとお礼を口にした。

「はい。ありがとうございました~」

 各国の記者の取材を受けたヴィヴィは、超特急で着替えを済ますと、今度はクリスのリンクサイドに立った。

 今季のFP、映画『シャーロック・ホームズ』を模して、白シャツにネクタイ、茶系のタータンチェックのベスト、焦げ茶のパンツを纏ったクリスは、常と同じく淡々と自分の順番を待っていた。

「じゃあ、クリスには、『ホームズ様になり切って、難事件を解決してらっしゃい』と激励メッセージを送りましょう」

 そうおどけてにかっと笑ったヴィヴィに、クリスは、

「僕は “ヴィヴィという、愛くるしい生き物の謎” を解明したいけど……」

と本番直前にも関わらず、しれっと妹の肩を抱いてくる。

(し、心臓、強……っ)

 スケート靴を履いているので、いつもよりも更に高いクリスの腰を、ポンポンと叩いたヴィヴィに送られ、双子の兄はリンクへと入って行った。

 そしてヴィヴィと同じスケジュールにも関わらず、冒頭の4回転ループを決めた。

(凄……っ あれ1本で12.0点……)

 きっとGOE(出来栄点)もたんまり付くんだろうな……、と呆けているヴィヴィの前で、クリスが今度は4回転サルコウ + 3回転トウループのコンビネーションを確実に決めて見せた。

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