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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章           

「…………可愛い」

 公共の電波の前で、1人遊んでいるだけのヴィヴィにそう萌えたクリスは、その肩を抱き寄せて頬に口付けてくる。

「可愛くは、ない」

 取りあえずそこを否定していると、クリスの得点が出た。

「わぉっ! 凄い~っ!!」 

 2位以下を15点も引き離してぶっちぎりの1位だったが、やはりクリスはあんまり納得していないらしい。

 その辺は自分も分かるので、ヴィヴィはぽんぽんとその背中を撫でて励ましたのだった。





 翌日、10月25日(日)は、昼過ぎからエキシビションを滑り、夜はクロージングバンケットへと参加した双子は、その翌日、26日(月)は機上の人となっていた。

 北京を9時発の、ビジネスクラスのシートに隣通しに座った双子は、乗り込んで早々、

「なんか、寒い……」

「……僕、も……」

と不調を訴え出した。

 ジュリアンや柿田トレーナー達が、ブランケットをかき集めたり、温かい飲み物を飲ませたりと献身的に面倒を見てくれたが。

 4時間半後の13時過ぎに羽田に着いた頃には、2人とも熱発していた。
 
 車椅子に乗せられた双子は早々に入国手続きを済ませ、迎えのリムジンで篠宮邸へと帰り着いた。

 正直、ヴィヴィにはリムジンに乗り込んで以降の記憶は、殆ど無い。

 寝ている間に寝室に運び込まれ、主治医の診察を受けたらしいヴィヴィは、日が暮れ始めた頃に目を覚ました。

 尿意をもよおして。

「…………あさひ、な?」

 近くに人の気配を感じてそう自分の執事の名を読んでみれば、近付いてきたのはやはり朝比奈だった。

「お嬢様。具合は如何ですか?」

「ん……、頭、痛い……」

 頭がズキズキと痛み、熱があるのかぼうとする。

 ただ咽喉の痛みは無く、言葉を発するのは苦では無かった。

「痛み止めと解熱剤が処方されていますから、食後に飲みましょうね」

「……ね、クリス……は……?」

 ヴィヴィの記憶では、飛行機の中でクリスも同じ症状を訴えていた。

 心配になってそう尋ねれば、

「クリス様も、ヴィクトリア様と同じ状況ですね。疲労からくる発熱で、今は安静にしていらっしゃいます」

 予想通りのその返事に、ヴィヴィの表情が曇る。

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