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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
「……大丈、夫……?」
「ええ。今は五十嵐さんが付いて下さっているので、安心して下さい」
朝比奈のその答えにヴィヴィは頷くと、ほっと気が緩んでさらに尿意をもよおした。
「………………っ」
(と、トイレ……)
ヴィヴィは上掛けを捲り、怠い身体を何とか起こしてバスルームへ行こうとしたら、朝比奈に驚かれた。
「お嬢様、どうなさいました?」
「………………バス、ルーム」
(という名の、トイレ……)
「仰って下されば宜しいのに。失礼致します」
「……え? って!? きゃっ」
いきなり横抱きされたヴィヴィは、あまりの驚きに声を上げたが、朝比奈はそのまま寝室を出てバスルームへと主を連れて行く。
いつの間にか縋り付いた黒スーツの首から腕を解いたヴィヴィは、そこで下された。
「あ、りがと……、お、重いのに……」
もう小さな子供じゃないのにこんな事をされて恥ずかしくて、そう呟いたヴィヴィに、朝比奈は首を振る。
「滅相もございません。お嬢様は中学生の頃から体重が変わっていらっしゃりませんし、とても軽いですよ」
そうフォローになっているのだか、よく分からない言葉を残して出て行った朝比奈に、ヴィヴィはもう一度心の中で礼を言うと、当初の目的を果たした。
流石に自分で歩いて手を洗ったヴィヴィだったが、また朝比奈に抱き上げられてしまい、ベッドまで連れ戻された。
料理長お手製のうどんを綺麗に平らげたヴィヴィは、処方された薬を飲み、また眠りについたのだった。
10月27日(火)、中国から帰国した翌日。
この日も往診に来てくれた主治医から点滴を受け、ヴィヴィもクリスも37℃台まで熱が落ち着いてきていた。
昨日苦しんだ頭痛もなりを潜め、消化の良いディナーをベッドの上で摂ったヴィヴィは、また横になるように言われる。
「五十嵐……、ヴィヴィ、もう、眠くないんだけど……」
今日は匠海の執事の五十嵐が、ヴィヴィの看病をしてくれていた。
きっとクリスのほうに、朝比奈がついているのであろう。
「お嬢様。では何か、本でもお持ち致しましょうか?」
「……起きちゃ、駄目?」
ずっと寝てばかりで逆に寝疲れしてしまったヴィヴィは、そう甘えた声を出してみるが、五十嵐は困ったように微笑むだけ。