この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
「ああ、可愛いな……」
「…………く、ない……」
ヴィヴィは兄の愛でる言葉を、咄嗟に否定する。
(だって、暇に付き合わせてるだけ、だし……。第一、「毎日10分ずつ」って言い出したのは、お兄ちゃんだし。ヴィヴィ、有言実行させてるだけだし……)
妹のその思考さえ読み取っているように、匠海はふるふると頭を振ると、また嬉しそうに囁く。
「いいや、お前は本当に、可愛いよ」
「………………」
(違う……、可愛くなんて、ないもん……)
上掛けの下で、唇を真一文字に引き結び、ヴィヴィはそう頭の中で兄の言葉を跳ね返す。
「ヴィクトリア……、好きだよ」
妹を覗き込みながら囁かれる、兄の暖かなその声音に、ヴィヴィはたまらずに微かに首を振ってみせる。
(そんな事、言わなくていいから……。もっとヴィヴィに。お兄ちゃんの話、聞かせて……)
けれど匠海は、まるで抑えていた気持ちが溢れ出して止まらないといった様子で、ヴィヴィに愛を囁き続ける。
「すぐに拗ねてしまうお前も、でもころっと機嫌が直ってしまうお前も、可愛らしくて目が離せない……。本当に、大好きだよ」
「………………っ」
ヴィヴィは苦しそうに、灰色の瞳を細める。
(だから、そうじゃなくて……っ ヴィヴィが可愛いとか、だ、大好きとかっ そういうんじゃ、なくって~~っ)
「愛しているよ」
「………………ゃっ」
どんどん盛り上がっていく兄の告白に、ヴィヴィはとうとう黙って居られなくなり、咄嗟に小さく喚く。
顔が熱く感じ、いつの間にか自分が真っ赤になっていることに気付いたが、兄は止めてくれなくて。
「寝ても覚めても、お前の事しか、考えられない……。本当に、愛しているんだ、ヴィクトリア」
甘い、途轍もなく甘い兄の告白に、ヴィヴィはギュッと目蓋を瞑ると、必死に声を振り絞った。
「………………ねつ、あがるっ」
本当に頭がクラクラしてきた。
(やだ……っ もう、ホント、やめて……っ)
ヴィヴィは必死に抵抗するのに、耳元で囁かれた兄の言葉は、
「照れてるのか? ふ、本当に、可愛いな」
そう、まるで煽るような言葉で。
「……~~っ」