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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第98章
嫌と言っているのに、拒否しているのに繰り返される兄の熱い、愛情を形作る言葉達。
それをもう受け止めきれなくて。
いや、どう受け止めていいのかも、正直解らなくて。
ヴィヴィは何が何やら混乱し、感情のコントロールに支障を来した。
(もう……、や……っ)
一杯いっぱいになった心が、その均衡を図ろうとでもするかのように、灰色の瞳から大粒の涙を零れさせる。
「ああ、ごめん……。泣かないでくれ、ヴィクトリア……」
先程までのしつこさは何処へやら。
急に殊勝に謝り始めた兄に、ヴィヴィは枕に乗せた頭を、緩慢に振るばかり。
「悪い。お前が本当に愛しくて……。ごめんな、自分の気持ちばかり、押し付けるような真似して」
「……――っ」
その兄の謝罪の言葉にすら、胸が苦しくて。
止めど無く溢れ落ちる涙に、ヴィヴィ自身も途方に暮れる。
この涙は何なのだろう。
熱い。
ただただ熱い、こめかみを伝うこの涙は。
目頭から止めどなく分泌されるこの熱い液体は、
一体何の意味があって、
そしてどんな感情でもって、
生み出されているのだろう。
分からない。
自分の事なのに。
けれど、1つだけ解ったことがある。
この熱い涙をもたらしているのは、すぐ傍にいる、兄の存在だということ。
ただ、それだけは――。