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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

 NHK杯を終えた直後から、双子は周りが見えなくなるほど追い込まれていた。

 自分達の事で一杯いっぱいで、多分周りは「台風、中国杯に影響しないかな?」と心配していただろうに、双子には「これ以上、心を乱さないように」と、黙秘していたのかもしれない。

(それは、大変、気を遣わせて、申し訳なかったな……。結果、熱まで出しちゃったし……)

 そう心の中で反省したのは、きっとクリスも同じだったろう。

「そっか……。学校、休校かぁ~……」

 残念そうに呟くヴィヴィに、クリスが続く。

「朝比奈……。夜になったら、台風は太平洋側へ、北上してるんじゃない……?」

「ええ、おそらくは」

「あ、じゃあ、夜はリンク行っていい? ヴィヴィ、2日も寝てたから、正直身体動かしたくて、ムズムズする~っ」

「僕も……」

「しょうがありませんね、お二人共。分かりました、奥様にそうお伝えしておきます」

 双子の根気強い説得に折れた朝比奈は、苦笑しながらそう発した。

「ありがとう! じゃあ、クリス。勉強でもする?」

「うん……。じゃあ、朝風呂でも入って、40分後にダイニングで……」

「了解~」

 ヴィヴィはクリスと別れると、自分のバスルームで朝風呂に浸かった。

 台風の真っただ中だというのに、朝から大好きなバスソルトの香りを楽しみながら、こんなにゆっくりと過ごせるとは、なんと贅沢な朝なのだろう。

(しかし、台風か~……。もう10月最終週なのに、まだ発生するんだ~……。台風……)

 傾斜のついたバスタブに背を預け、ぼへ~と腑抜けていたヴィヴィだったが、

「…………、って、た、台風――っ!?」

 何故か急に慌てふためいたヴィヴィは、バシャっと音を立て、バスタブから背を起こす。

 立ち上がって胸上くらいにある高い窓から外の様子を伺うが、窓に叩き付ける豪雨のせいでそれは計り知れなかった。

「………………」

 ヴィヴィはしゅんとしてそのまま身体を洗おうとしたが、ふと感じた下腹部の違和感に、視線を落とす。

 抜ける様に白い太ももに伝い落ちる、朱いそれ。

(あ、そっか……。帰国してから、ピル飲んでなかったや……)

 そう納得したヴィヴィは、水圧の高いシャワーでそれを洗い流したのだった。





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