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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

 その日から、ヴィヴィは匠海との毎日10分の逢瀬を、さほど苦痛に感じなくなっていた。

 確かに凄く恥ずかしかった――見舞ってくれた兄に、愛を告白されて泣いてしまった、不甲斐ない自分が。

 しかしそれがショック療法であったかのように、兄の前で泣いたヴィヴィは、もうそれほど気負わずに匠海と向き合えるようになったのかも知れない。

 兄に憎まれ口を叩く事も、鋭くきつく突っ込む事も控えるようになったヴィヴィは、その週、いつも通りBSTに通い、リンクで練習に励み、屋敷ではクリスと受験勉強に励み、夜は匠海との逢瀬を重ねるのであった。







 10月31日(土)。

「Happy HALLOWEEN!!」

「YEAH! 久しぶりのパーティーっ!!」

 千代田区一番町にある英国大使館には、賑やかな声が飛び交っていた。

 いつもなら紳士淑女が集う筈のそこで、悪目立ちをしている集団が20名程。

「みんな~! 楽しむのはいいけれど、羽目外しすぎないようにね? それと、お酒飲んじゃだめだからね~!」

 そう注意を促すのは、英国大使を父に持つカレン。

 英国発祥のイベント――ハロウィンパーティーに、BSTの3年生全員が招待されたのだ。

 盛り上げ & 仮装 要員として。

 思い思いに仮装した面々は、カレンの忠告を聞いているのかいないのか。

 ワイワイがやがや、いつも通りに楽しんでいた。

 双子も土曜日ということで、早朝から昼過ぎまでリンクで練習に励み、屋敷に戻って勉強すると、夜からパーティーへと繰り出した。

「ヴィヴィ~。今年はまた、ぶっ飛んでるね?」

 ケイトのその突っ込みに、ヴィヴィは満面の笑みを浮かべる。

「ふっふっふ~っ メデューサだよん」

 その場でくるりと回って見せたヴィヴィに、隣に立っていたクリスが「可愛い……」と呟く。

 無数の白蛇、赤蛇、黒蛇がにょろにょろ這った頭の被り物をし、金色の髪を蛇の様にぐりんぐりんに巻いたヴィヴィは、赤いマントを着込んで、左手には肘下から指先まで赤蛇の着ぐるみを付けていた。

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