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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
「これが可愛いって、クリスの趣味は、よく分かんない……」
ハロウィン = 恐ろしい仮装 と思い、ギリシャ神話の怪物にしたのに。
そう呟いたヴィヴィに、カレンが不思議そうに首を傾げる。
「あれ? ヴィヴィって、蛇……っていうか、爬虫類とか両生類全般、苦手じゃなかった?」
「うん。大っ嫌い!」
両拳を握り締めて力いっぱいそう力説したヴィヴィに、周りのクラスメイトがきょとんとする。
「なのに、蛇……?」
「うん。この蛇は可愛いでしょ?」
確かにかなりデフォルメされた蛇達は、子供でも喜びそうなほど真ん丸で可愛い顔をしていた。
「なるほど。で、クリスは……ゾンビ?」
フランケンシュタインのコスプレをしたアレックスが、頭を大きな包丁で真っ二つにされた状態のクリスを見つめる。
「うん……。ちなみにメイクも、自分でした……」
そうぼそぼそ呟くクリスの顔は灰色で、目の周りは真っ黒に落ち窪み、口の周りは血だらけだった。
「ああ、まるでハリウッド特殊メイク、直伝の如き完成度……。怖ぇ~っ」
男子達がそう脅えるほど、クリスのコスプレは完ぺきだった。
カレンは黒い角を生やし、黒いコウモリの羽が付いたミニのワンピで、デビルガールに。
ケイトは何故か、白い着物に赤い袴を履き、黒髪のかつらを被った巫女に。
マイクは全身シマシマの囚人服で、足首にはボーリングの玉の様な拘束具をつけていた。
皆それぞれに凝った仮装に盛り上がり、写真を撮り合ったり、立食パーティーの食事を摘まんだりと、日頃の“受験生のうっぷん”を晴らすように騒いでいた。
ジャックランタン(カボチャのちょうちん)や墓石をはじめとするハロウィンの飾りで彩られた中庭には煌々と明かりが灯され、バンド演奏が行われたり、ゲームが始まったり。
ヴィヴィは顔見知りの来賓の方々に、
「Trick or Treat!(お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ?)」
と挨拶という名のちょっかいを出しに行って、楽しんでいた。
パーティーが始まって2時間ほど経った頃。
初めから来ていた客が帰りだし、反対に仕事帰りで今から参加する客が訪問し始めたりと、人の移動があった。