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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
ヴィヴィは化粧室に行こうと、一緒にいたカレンとカレンの父に断わり、樹木に囲まれた広い中庭から、石造りの大使館の建物へと入った。
天井の高い廊下を抜け、化粧室の近くまで辿り着いたヴィヴィの耳に、こそこそと囁き合う男女の声が届いた。
「………………?」
きょろきょろと辺りを見回すヴィヴィの視線の先、ウェイティングルームとして使われていた一室に、クラスメイトのジェイソンとジェシカの姿を認める。
ヴィヴィは2人に大声を出して驚かせてやろうと、足音を殺しながらウェイティングルームに近づいて行った。
「みん、な、…………でしょ?」
「……ちょっと、だけ……」
こそこそと囁き合う2人の様子に、ヴィヴィは何かいつもとは違う空気を感じ、ふと足を止めた。
「あ、……ダ、メ……っ」
「キス、だけ……。な……?」
恥ずかしそうに拒んでいる魔女のジェシカに対し、死神の紛争をしたジェイソンが、聞いた事もない色気を含んだ声で、そう囁く。
(……え……? キス……?)
「ん……キス、だけ、だよ……?」
「ああ……」
そう甘い空気を醸し出しながら、ヴィヴィの視線の先で、2人はキスを始めた。
「……~~っ!?」
目の前で起こっている出来事に、ヴィヴィは正直ぶったまげた。
ジェシカとジェイソンは、喧々囂々、常に言い合っている――そう、女子と男子のリーダー的存在で、よくぶつかっているイメージだったのに。
(え……っ あの2人って、そういう……?)
熱烈なキスを繰り広げる2人から離れ、ふらふら化粧室に辿り着いたヴィヴィは、ハロウィン用に飾り付けされた洗面台に、両手を付いてうな垂れた。
「う~~そ~~……」
そう気の抜けた声で唸っていたヴィヴィに、奥の個室から出て来たらしいケイトが、驚いたように声を掛けてきた。
「どしたの、ヴィヴィ? 顔、真っ赤!」
頭に沢山蛇を生やしたヴィヴィは、その姿に似つかわしくない弱々しい声で、巫女姿のケイトに尋ねる。
「ケ、ケイト……。えっと、間違ってる、かも……、なんだけど……」
「ん? どした~?」
「んっとね……? えっとね……?」
言いにくそうにそう勿体ぶるヴィヴィにも、ケイトは根気強く耳を傾けてくる。
「うん、なあに?」