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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第21章
(で――結局次の日にコーチ陣に「サロメじゃ駄目」と言われ、ロシアに行き……今に至る……と)
ヴィヴィは飛行機のシートの上でいつの間にか閉じていた瞼を開く。
バースデーパーティーでは匠海はいつも通り優しい兄だった。
ゴールデンウィークの間ロシアにいたヴィヴィは、匠海ともう五日も会っていないし声も聞いていない。
(早く、会いたいな……)
「ふう……」
思わず漏らしてしまった溜息に、隣のシートで眠っていたはずのクリスが体を起こした。
「なんだ、ヴィヴィ……起きてたの……?」
クリスはそう呟くと、腕を伸ばしてヴィヴィの後頭部に掌を添え自分へと引き寄せる。
「おはよ……」
そう言って妹の頬に小さくキスを落としたクリスに、ヴィヴィも同じく「おはよ」とキスを返す。
「よく寝た……あと三時間ほどで日本に着くね……」
両腕を上げてう~んと伸びをしながらクリスがそう呟く。
ヴィヴィも腕時計で時間を確認して頷く。
成田到着は時差の影響で出発日翌日の昼前だ。
それからリンクへと直行し、コーチ陣の前で出来上がりほやほやのプログラムを滑って見せることになっている。
「………………」
(お、怒るだろうな……マム……)
あれだけ「諦めない」と強気だったヴィヴィだが、やはりコーチ陣の助言を聞き入れず自分の希望を貫き通してしまったことに、若干の後ろめたさを感じてしまう。
「僕は好きだよ……ヴィヴィの『サロメ』……自信持って……?」
不安そうなヴィヴィの表情に気付いたクリスが、妹の頬を指先でさすさすと撫でる。
「ありがと……罵倒されるだろうけど……覚悟、決めるよ――」
ヴィヴィはそう言って小さく笑うと、クリスも頷いてくれた。