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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

「今日……、ヴィヴィの寝室でも、いい?」

 何故か真っ直ぐに兄の顔を見つめる事が出来なくて、ヴィヴィは匠海のネクタイの結び目を見つめながらそう尋ねる。

「え……?」

 自分の存在を拒否していた筈の妹のそのいきなりの誘いに、匠海はそう短く呟きながらきょとんとヴィヴィを見つめていた。

 そんな兄にちらりと視線を合わせたヴィヴィは、また匠海の咽喉もとを見つめて呟く。

「……駄目……?」

「いや……。大丈夫だよ」

 そう答えてくれた匠海に、ヴィヴィは内心ほっとしながら、寝室に誘った訳を説明する。

「……なんか、乳酸、溜まってる感じで……。ストレッチしながらでも、いい?」

「いいよ」

 ふと微笑んでみせた匠海にヴィヴィは頷くと、傍に控えている朝比奈を振り返る。

「朝比奈。今日は付き添ってくれなくて、大丈夫だから」

 そう伝えてくる幼い主に、朝比奈は一瞬眉を顰めたが、ヴィヴィがじっとその様子を見つめていることに気付き、目礼した。

「……畏まりました。ではお2人とも、おやすみなさいませ」

「おやすみ、朝比奈」

 リビングを出ていく朝比奈に兄がそう挨拶を返し、ヴィヴィもその後ろ姿に呟いた。

「おやすみなさい……」

 執事が退室し、ヴィヴィは匠海を伴って自分に寝室の扉を開く。

 ヴィヴィに続いて寝室に足を踏み入れた兄は、妹がキングサイズのベッドの上によじ登ると、その隅に腰を掛けた。

 羽根布団を捲った白いシーツの上に、もふもふのホットパンツから剥き出しの細長い脚を揃えたヴィヴィは、その上にぺたりと上半身を倒した。

「……ふぅ……」

「ストレッチ不足?」

 兄のその問いに、ヴィヴィはゆっくりと上半身を起こす。

「ん……、今日、練習が長引いちゃって、帰りバタバタだったの……」

 そう説明しながら大きく開脚したヴィヴィは、右脚の方へ向かって息を吐きながら上半身を倒していく。

「明日に疲れを残さないように、ちゃんとしておきなさい」

「……ん……、そう、する……」

 兄の忠告通り、粛々とストレッチを続けながらも、ヴィヴィの心は匠海に反発していた。

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