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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
どうせ、躰が目当てなんでしょう?
ヴィヴィの心が整うまで、待ってなんかくれないんでしょう?
もう期待するの、嫌なの。
裏切られたら嫌だから。
自分の今の気持ちを兄に打ち明けてみよう――そう思ったヴィヴィに投げ付けられた、匠海の酷い言葉。
あの英国での世界選手権の時みたいに、裏切られたらきっともう、立ち直れないから――。
だったら、もう自分から “けり” をつけよう。
兄から裏切られるくらいなら、
自分から誘惑して、もう全てを終わりにしよう。
それで兄が自分に手を出して来たら「やはり、そうか」と諦めもつく。
そしてそのほうが、予測していた分、まだ受けるショックは少ない筈――だから。
仰向けに寝そべったヴィヴィは胸を張り、両膝を軽く曲げて立たせる。
片足をもう片方の足の上に組み、左右両方に腰を捻り骨盤を解す。
「……ふぅ……」
小さく息を吐きながらまた仰向けに横たわると、今度は片足ずつ折りたたんで胸へと抱き込む。
太ももの前と後ろを伸ばすストレッチは、常ならばこんな裾の短いホットパンツではしない。
お尻の半分が露出する、卑猥な状態になってしまうから。
左右同じストレッチを行いながら、ヴィヴィは兄の視線を全身に感じていた。
兄はびくともせずに、じっと自分を見下ろしている。
また真っ直ぐに仰向けに戻ると、両腕を頭の上に伸ばして組み、全身を上下に伸ばす。
「ん~~っ……」
小さく唸りながら背中を反らす。
もふもふのパーカーに包まれた薄い胸とその下の肋骨が、弧を描くように上へと持ち上がる。
各関節が伸びたのを確認し、ゆっくりと背中をシーツの上に下したヴィヴィは、薄い唇を開いた。
「……お兄、ちゃん……?」
「ん?」
静かに返されたその兄の相槌に、ヴィヴィは首だけをこてとそちらに向ける。
「……今日は、静か……」
「そんな事ないよ。ああ、そういえば」
小さく微笑んだ兄は、何かを思い出したように表情を改める。
「……ん……?」
「先日……金曜か、出先で真行寺に会った」
兄のその言葉に、ヴィヴィはゆっくりと上半身を起こして聞き返す。
「え……、真行寺さん……?」