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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

 ヴィヴィは膝から手を離すと、そのままぺたりと白いシーツの上に前屈する。

 「土」の字状になったヴィヴィは、しばらくその状態でいたが、やがて頭の中で首を捻る。

(なんか、全然、誘惑出来てない気がする……)

 兄は自分に指一本触れようとして来ないし、欲情している素振りもない。

 ただ、物凄く静かだった。

 いつも10分間、まるで沈黙を作らせるものかという様に喋り続けていた兄とは、今日は様子が違っていた。

 ヴィヴィは伸ばしていた両腕を引き寄せ、前屈したままシーツの上で頬杖をつく。

 そしてゆっくりと兄を見上げて視線を合わせ、薄い唇を開いた。

「……お兄、ちゃん……?」

「ん?」

「どう、したの……?」

 「何でそんなに静かなの?」と言外に滲ませながら尋ねたヴィヴィに、匠海はふっと瞳を細めた。

「ああ……。身体、柔らかいの……、何時からだったろう、と思い出してた」

「……たぶん、生れつき……? ヴィヴィも、クリスも……」

 ヴィヴィのその返しに、兄は納得したように頷く。

「ああ、じゃあ、マムに似たんだな」

「……ダッド、硬かった?」

 こてと頬杖をついたまま首を傾げたヴィヴィに、匠海が笑う。

「とっても。床に落ちたペン拾うのも、辛そう」

「あははっ」

 父のその様子がた易く想像出来、ヴィヴィは声を上げて笑った。

 そんなヴィヴィの様子を見つめながら、兄が嬉しそうに微笑んだ。

「………………?」

「ヴィクトリアの笑う顔、見られて嬉しいなと思って」

「………………っ」

 匠海のそのくさいセリフに、ヴィヴィは息を呑むと、ゆっくりと伏せたままだった上半身を起こした。

「今日は色んなヴィクトリアの表情が見られて、良かった」

「…………やっぱり、女たらし、だ」

 兄の甘い言葉に、何故か唇を尖らせてそうぼそりと零したヴィヴィに、匠海は苦笑する。

「ふ、そうかもな。お前がそう言うなら」

 ぎしりと音を立ててベッドから立ち上がった匠海に、ヴィヴィは不思議そうに見上げながら首を傾げる。

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