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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

「おっふっろ~♪」

 そう明るく歌いながらバスルームに向かうヴィヴィに、朝比奈が小さく笑う声が届いた。

 扉を閉めたヴィヴィは、纏っていたスポーツウェアを脱ぎながら唇を噛み締める。

 お兄ちゃんを信じようとするから、そうならなかった時に裏切られた感じがするんだ。

 過度の期待を寄せるから、期待通りにならなかった時に絶望するんだ。

 それならばもう、最初から信じなければいい。

 そう――期待なんてするほうが、馬鹿なんだ。






「ヨガ……?」

 今夜も妹の寝室に誘われた匠海は、ヴィヴィが昨夜に引き続きベッドによじ登る様子を見つめながら、そう尋ねてくる。

「うん……。リンクメイトの舞ちゃん、分かる……?」

 羽毛布団を避けたヴィヴィは、昨日と同じくベッドの隅に腰かけた兄を振り向いて口を開く。

 そんなヴィヴィが纏っているのは、首元が大きく開いた緩めのTシャツにキャミソールのインナー。
 
 お尻のラインが出る、柔らかで伸縮性のある素材のホットパンツだった。

「ああ、ペアの下城・成田組の……?」

「そう……。舞ちゃん、ヨガ、いいよって、ずっと言ってて……」

「ふうん?」

「やってみようと、思って……」

 下城舞がヨガをやっているのは本当だ。

 けれどヴィヴィは、別にそれほど興味を持っていなかった。

 将来的にはやってみたいけれど、多忙な今、すぐさま取り入れたいとは思っていないのが本音だった。

「ヨガって、色んなポーズがあるんだろう? ヴィクトリア、知ってるのか?」

 今日の兄は昨夜と違い、良く喋る。

 匠海のその指摘に、ヴィヴィはふるふると金色の頭を振った。

「ううん。知らないから、調べながらやるの」

 ベッドサイドに置いていたiPadを手に取り兄に渡し、ヴィヴィは早速ヨガに挑戦する。

 立膝にした足の裏に両手を添え、息を吸いながらその足を上にまっすぐ伸ばしていく。

 恐るべき柔軟性を誇るヴィヴィには、別にそれは痛くも苦しくもなかった。

「今のは……、鷺のポーズ?」

 iPadとヴィヴィを見比べながら、匠海がそう尋ねてくる。

「うん……」

 左右の脚を入れ替えて同様にそのポーズをしていると、兄がiPadの液晶をヴィヴィに向けてきた。

「これ、やってみて?」 

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