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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

「猫のポーズ? いいよ」

 ヴィヴィはちらりと説明に目を通すと、その通りにポーズをしてみる。

 四つん這いになり、息を吸いながら頭とお尻を持ち上げ、背中を弓なりに反らす。

 まるでお尻を突き出すようなその格好に、少しの恥ずかしさを覚えながらも、息を吐いて今度は反っていた背中を丸め、肩甲骨を開く。

「ふ。うちのKitty(子猫ちゃん)が猫のポーズしてる」

 面白そうに声を上げて笑う兄に、ヴィヴィは焦って注意する。

「お、面白がらないで……っ」

「悪いわるい。じゃあ、これは? 亀のポーズ」

「ん……、出来ると思う」

 両足を肩幅大に広げた中にぺたりと上半身を倒したヴィヴィは、片腕ずつ伸ばした足の下に差し込む。

 上から見ると「丹」や、「A」の横棒が突き抜けた文字に見えそうなそのポーズを軽々したヴィヴィに、匠海が感心する。

「お前……、本当に柔らかいな」

「そ……?」

「ああ。じゃあ、これ出来るか?」

 兄が次に見せてきたのは、眠る亀のポーズ。

「ん……、たぶん」

 先程の亀のポーズから、脇に伸ばしていた両手を腰の上で組み、俯せている頭の上で両足首を組む。

「凄い……。俺は絶対に、無理だな」

 匠海のその感嘆の声を聞きながらも、ヴィヴィはすぐにそのポーズを解いた。

「ん……? 何度か深い呼吸をしないと、ヨガの意味、無くないか?」

 兄のそのごもっともな指摘にも、ヴィヴィは小さく首を振ると、伏せていた上体を起こした。

「………………変」

「え?」

「こんな、変なポーズ……、やだっ」

(だって、全然セクシーじゃないんだもんっ なんかインドの即身仏みたいなお坊さんが、やってそう……)

 異常に長い顎鬚を湛えた、骨と皮だけみたいなインド人のお爺さんに似合いそうなそのポーズに、ヴィヴィはほっぺを膨らませた。

 妹のその様子に、匠海は手にしていたiPadに再度視線を落とし、尋ねてくる。

「じゃあ、どんなのがいいんだ?」

「……可愛い、の……」

(っていうか、セクシーに見えるの……)

「ふは……っ もう、ヨガの定義、どうでもよくなってないか?」

 妹のその変な返答に、匠海は端正な顔をくしゃりと緩め、笑った。

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