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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

「へえ……。お兄ちゃんも、葉巻吸ったりするの?」

「付き合いでな。葉巻は肺に吸い込まず、口内で香りを楽しむんだ。洋酒との相性もいいしね」

「ふうん……」

 確かに匠海は日本の酒より洋酒を好んで飲む。

 シャンパン、ワイン、ブランデー、ウィスキー。

 その辺りを口にしている姿を見掛ける事が多かった。

「これもガスライターなんだよ。オイルライターだと、葉巻の香りを悪くするからね」

 大きな掌の中でシルバーのジッポを玩びながら、そう付け加える兄に、ヴィヴィは何故か押し黙った。

「………………」

 葉巻の嗜み方。

 社交術。

 大人の男としてのエチケット。

 兄は自分の知らないことを、沢山知っている。

「ん? どうした?」

 いきなり静かになった妹に、匠海は不思議そうにそう尋ねてくる。

「……大人、なんだね……。お兄ちゃんは……」

 ふと視線を落としてそう呟いたヴィヴィの声は、尻すぼみに小さくなる。

「え……? まあ、23だしな」

 そう、匠海は23歳。

 自分は17歳。

 年を取ればその年齢差も感じないのかもしれないが、今のヴィヴィには6歳差の年の差は歴然としていた。

「………………」

 ヴィヴィは剥き出しの両脚を折り畳むと、腕の中に囲い込む。

 恥ずかしかった。

 兄は大人の男。

 今まで掃いて捨てるほど大人の女――魅力的な女を兄は見てきただろう。

 そんな兄を自分はこんな貧相な躰で、ガキっぽいやり方で誘惑していたのだ。

 そのあまりの滑稽さに、凹んだ。

 もう、穴があったら入りたい。

 いいや。

 もう自分でスコップで穴を掘って、モグラの様にその中で一生を過ごし、兄の目に晒されたくない。

「ヴィクトリア、どうした……?」

「…………なんでもない、の」

 ヴィヴィはそう呟くと、両膝の間に顔を埋めた。

(ああ……、「何でも無い」なんて言って……、どう見ても「何でも無くなさそう」に見えるよね……)

 更なる自分のガキっぽさに、ヴィヴィの目頭が熱くなったが、ぎゅっと目蓋を閉じて耐えた。

 ぎしりとスプリングが軋む音の後に続いたのは、匠海の労わる様な声。

「…………、ヴィクトリア?」

「………………ん」

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