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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
「お前はまだ、17歳……、高校生だろう?」
「……うん……」
そう当たり前の事を確認してくる兄に、ヴィヴィは微かに頷く。
「大人じゃなくて、当たり前だ」
「………………」
まるで「お前の考えている事、感じている事は分かっているよ?」と言っている様な兄のその言葉に、ヴィヴィは更にぎゅうと自分の膝を抱え込む。
「それに俺は、 “今の等身大のヴィクトリア” が好きなんだよ?」
「……っ ……う、うそ……」
咄嗟に埋めていた顔を上げ、そう否定したヴィヴィに、匠海は微笑みながら小さく首を振った。
「本当。高校生らしく健やかで、色んな事に挑戦して頑張ってる……そんなヴィクトリアだから、好きなんだ」
「………………っ」
(本当に……? 本当……? 今の、ガキっぽくて、馬鹿丸出しのヴィヴィでも、好きなの……?)
苦しそうに瞳を細めるヴィヴィに、兄は「大丈夫」と囁く。
「今は無理でも、いつか分かって欲しいな。俺の気持ち……。俺が、ヴィクトリアの事を、本当に愛しているってね」
「………………ん」
そう頷いてはみるものの、ヴィヴィの心中は複雑だった。
兄を信じない、兄に期待しない。
そう心に誓ったのに、匠海は誘惑しても自分に手を出そうとしない。
それどころか長期戦となる覚悟を、自分に見せてくれている。
(もう、どうするのが正解なのか……、ヴィヴィ、分かんないよ……)
困り果てたヴィヴィが眉根を寄せながら、顎を両膝の間に埋めた。
しょぼくれた妹の様子が面白いのか、匠海が楽しそうに笑う。
「ふ……、やっぱり、ヴィクトリアは素直で良い子だよ」
兄の更なる言葉に、ヴィヴィはぱっと頬を染める。
「…………恥ずか、しいっ」
(だから、素直じゃないってばっ!)
「すぐ照れるところも、可愛いよ」
「……~~っ」
まるで妹を褒めちぎって悶え死にさせんばかりの様子の兄に、ヴィヴィの小さな顔はもう真っ赤に染まってしまった。
(顔……、あ、熱い……)
しばらくそんなヴィヴィの様子を嬉しそうに見つめていた兄だったが、やがてちらりと袖口から覗かせた腕時計に視線を落とすと、形の良い唇を開いた。
「これ、もう消すか?」
兄がそう言いながら手を伸ばしたのは、アロマキャンドルの缶で。