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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第22章
目をぱちくりさせたヴィヴィの視線の先には、とっても悔しそうな表情を浮かべたジュリアンがいた。
そしてその両手はヴィヴィの白い頬を、これでもかと思いっきりつねっている。
「い゛っ……いだい゛、です……っ!」
さすがに長く与えられる痛みに耐えられなくなり、ヴィヴィはされるがままになりながらも口で抵抗してみる。
「まったくこの子はっ!! ちっとも私の言う事を聞こうとしないんだから――っ!!」
ジュリアンはそう叫ぶように言うと、最後の駄目押しとばかりにヴィヴィの頬をギュッとつねり、ようやく両手を離した。
「……ごめんなさい。言うことを聞かなくて……でも――」
静かにそう口を開いたヴィヴィをジュリアンが遮る。
「『でも、間違ったことはしていない』――そうね……?」
ジュリアンが続けた言葉に、ヴィヴィは首肯する。
「今の私には、サロメが必要なんです……自分を成長させるためにも――」
ヴィヴィはそこで言葉を一旦区切ると、強い視線でジュリアンを見返す。
「オリンピックで『金メダル』を取りにいくためにも」
ヴィヴィのその意思表示に、周りの空気が一変した。
「ヴィヴィ、お前……」
隣ではサブコーチが驚いて言葉に詰まり、周りのスタッフやいつの間にか集まってきていたリンク仲間はざわざわと騒ぎ出す。
けれどそんな中、冷静にヴィヴィ達を捉えている視線があった。
テレビカメラ越しの三田ディレクターだ。
「ふん! 言うじゃない……でも、『お子ちゃま』のヴィヴィに、サロメが演じきれるかしら――?」
そう挑発してきたジュリアンにも、いつもはすぐかっとするヴィヴィは乗らなかった。
その代り、一歩後ろに引いて何を思ったのか深々と頭を下げた。
「私一人の力では無理です。だからどうか、お願いします……私に、皆さんの力を貸してください――!」
声を振り絞ってそう懇願したヴィヴィに、ようやく溜飲を下げたらしいジュリアンが上から声をかける。
「ふ、ふ、ふっ……分かればいいのよ! ヴィヴィもクリスも、貴方達がリンクの上で輝けるのはここにいる全てのスタッフの力添え、心配りがあってのことよ。それに背いていては、良いものは創れない……その事に気づけただけでも、今回は成長したわね――」