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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

「ん……。あ、もうちょっとだけ、欲しい……」

「手、出して」

「ん……。ありがとう……」

 掌に受け取った暖かなオイルを両手で広げたヴィヴィは、左右のすねにそれを塗り込み、満足そうに微笑んだ。

「……お兄ちゃん……」

 缶の蓋を閉じて炎を消す兄を、ヴィヴィは小さな声で呼ぶ。

「なんだい?」

「ん……。えっと、素敵なお土産……、ありがとう……」

(もっと早く、使ってみれば良かった……)

 2ヶ月以上も前に貰ったその存在を、正直ヴィヴィは失念していた。

 妹の素直なお礼の言葉に、今日の中で一番大きな微笑みを浮かべた兄は、愛おしそうにヴィヴィを見つめた。

「どういたしまして。おやすみ、ヴィクトリア」

「おやすみなさい……」

 兄が静かに寝室を出て行った。

 それを見つめていたヴィヴィは視線を落とし、蓋の閉じられたアロマキャンドルの缶を見つめる。

 これを選ぶ時、兄は自分の事を思い出しながら選んでくれたのだろう。

 その事に今、ヴィヴィは少しの嬉しさを感じていた。

 自分がこれを使って、香りに癒されて、オイルでマッサージして。

 そういう事を思い浮かべて、留学中の兄が自分の為に忙しい時間を割いて選んでくれたものだから。

「…………、あれ……?」

 しばらくぼうとそれを見つめていたヴィヴィだったが、缶の傍に置かれている物に気付き、微かに声を上げる。

 うんと腕を伸ばして手に取ったのは、兄のガスライターだった。

(忘れていったんだ……。明日の夜、返せばいい……? あ、でも明日、使うかも……)

 ヴィヴィはそう思い至ると、背の高いベッドから降りて寝室を出た。

 匠海が消してくれたのだろう、暗いリビングを抜け、兄の私室への扉をノックする。

「………………?」

 2度繰り返したが返事がなく、ヴィヴィは恐るおそる扉を開いた。

 煌々と明かりが灯ったままのリビングに、兄の姿は無く。

 扉が開け放たれた書斎にも、寝室にも暗闇が下りていた。

(あ、お風呂か……)

 そういえば、兄はスーツを纏っていた――つまり仕事帰りで、まだ湯を使っていなかった。

 ヴィヴィは忘れ物をリビングのテーブルに置いて行こうかとも思ったが、もし兄がそれに気づかなかったらと思い直し、バスルームの方へと脚を運んだ。

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